見せ場なかった中国「全人代」の本当は怖い中身 「首相会見の中止」だけでない習近平への超集権
毎年3月に北京で開かれる全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は中国政治の内幕を垣間見る数少ない機会だ。中国共産党の政府に対する優位が憲法に明記されているお国柄だけに、全人代も「ゴムスタンプ」、つまり党の決定を追認し、同意のハンコを押すだけの存在だと揶揄される。それでも、海外メディアの前で国家指導者が肉声を発する貴重な場だった。
3月11日の現地時間15時30分に閉幕した2024年の全人代では、国内外から期待された経済政策面での前進はほとんどなかった。見せ場の乏しいなかで浮かび上がってきたのは、すべての権力を共産党に集中させ、内向きになっていく中国の姿だ。
共産党への権限集中が決定的に
閉幕式では、「国務院組織法」の約40年ぶりの改正案が採択されたという報告があった。改正の狙いは「国務院(内閣に相当)が共産党の指導を堅持する」のをあらためて明確にすることだ。習近平国家主席が進めてきた、国務院の権限を共産党に一元化する流れを制度化したかたちだ。
全人代終了後には首相の記者会見が行われるのが通例だったが、今年は開幕の直前に見送りが発表された。今後も当面は行わないというアナウンスがあり、物議をかもした。
この会見では指名される記者も質問の内容も事前に決まっており、近年は出来レースの色が濃かった。そんな会見ですらなくしたのは、国務院のトップである李強首相の権限が縮小されていることの反映だとみる向きが多い。
しかし、李強首相は習近平主席の側近ナンバーワンとしてスピード出世したものの、中央政府での勤務経験が一切ない。彼が据えられた段階で、首相というポストはかなり軽量化していたはずだ。昨年の全人代終了後に李強氏は新首相として会見しており、今年あらためて中止した理由を「権限縮小」に求めるのには違和感がある。
李強首相は3月5日、全人代の開幕時に行った政府活動報告で、2024年の経済成長率の目標を「5%前後」とした。これは2023年と同じ水準だが、実現のハードルはより高くなっている。
厳格な新型コロナウイルス感染防止策、いわゆる「ゼロコロナ」政策が2022年の暮れに突然解除されたのに伴って、2023年の経済には反動増が期待できた。10月には1兆元(約20兆円)もの規模で特別国債が発行されることが決まり、それを原資にした財政出動も景気の下支えとなった。この結果、2023年の実質成長率は5.2%となり「5%前後」の目標をクリアできた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら