命の危機でも「人工中絶拒否」米国の痛ましい現実 共和党支持者中心に人工中絶反対の流れが加速

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――現在、トランプ前大統領がふたたび大統領に返り咲こうと動いていますが、そうした状況はどうご覧になっていますか?

もうとにかく驚いたを通り越して、落胆という言葉しか出てこないですね。いったいわれわれは何を見せられているんだろうと。まるでローマ帝国の終焉でも見させられているような不条理劇で、暗澹(あんたん)たる気持ちになってきますね。

わたしはイギリスのパスポートを持っているので、最悪イギリスに行ってもいいんですけど、イギリスにだって問題はありますからね……。なんだか世界中で保守の揺り戻しが起きているというか……。

男性ヒーローが不在の物語

――そんな状況だからこそ、この映画はタイムリーだと思いますし、オスカーにノミネートされてもよかったぐらいの力作だと思うのですが。

批評家の評判はよかったんですけど、残念ながら劇場ではそれほどヒットはしなかった。ただ現在、アメリカでは配信などで観られるようになっていて。それに対するリアクションもいいものが入り始めてはいるのですが。

フィリス・ナジー コール・ジェーン
本作のフィリス・ナジー監督は、脚本家としてトッド・ヘインズ監督の『キャロル』(2015)などを手掛けアカデミー賞の脚色賞にノミネートされた。本作は長編映画デビュー作©2022 Vintage Park, Inc. All rights reserved.

それでも、やはり役者の皆さんはオスカーのことをつねに考えているでしょうし、気になるところなんだろうと思います。とにかくこの映画に出ている俳優陣も、それぞれのキャリアの中で違う色を見せてくれるような、本当にすばらしいパフォーマンスを見せてくれた。そしてスタッフも本当にすばらしい結果を残してくれた。だから残念だなという思いはありますけど。夫をヒーローとして描いたなら事情は違っていたかもしれないですね(笑)。

でもこれは女性たちがどのように力を合わせていたか、という物語であり、ある意味男性のヒーロー不在の物語だとも言えるわけです。だからオスカーに引っかからなかったというのも、なんら別に驚くべきことではないですね。

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