(第6回)震災後に加速している製造業の海外移転

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自動車産業の海外移転が激増

1~3月期の増加率を業種別に見ると、輸送機械(前年同期比105・6%増)、汎用等機械(同53・4%増)、電気機械(同48・4%増)となっている。このように輸送機械の伸び率が高い値になっている。

それを反映して、北米(同70・0%増)の伸びがアジア(同56・7%増)より高くなっている。欧州は同44・0%増だ。10~12月期にはマイナスだった北米の伸び率が高くなっているのが特徴だ。

なお、輸送用機械のアジアでの投資は驚くほど高い増加率だ。ASEANで143・4%、中国で164・7%増となっている。これは「怒濤の勢い」というべきものだろう。

震災後、自動車生産は、最も大きな打撃を受けた。注文があっても生産ができない状態になった。その中で、タイで生産されている日産マーチだけが震災の影響を受けずに生産を継続できた。これまでのアジア移転は、賃金の低さや最終需要地に近いことを重視して行われてきた。マーチの経験は、「リスクへの対処」という観点からも海外生産が重要な意味を持つことを示したといえる。

震災によるサプライチェーン損壊の問題は、克服されつつある。しかし、国内生産のリスクがこれまでより増大していることは事実であり、その中には短期的に解決できない問題もある。その最大のものは電力供給だ。

今年の夏は、電力需要削減のため輪番休止という不自然な生産方式を行わざるをえなくなった。電力使用の量的な側面はクリアされるかもしれないが、生産コストが上昇することは避けられない。少なくとも、過剰な在庫を保有する必要が生じるだろう。その負担は、系列の下請け企業にシワ寄せされる可能性が高い。そして、こうした変化は、海外移転をさらに促進するだろう。

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