新生銀行、大株主の「国」が社長に詰問 1円配当の継続には株主から批判続出

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当麻社長が在任期間5年のうちに築いたという、収益の「土台」はどこまで今後に生かせるのか(写真は2010年撮影)

公的資金の注入を受けた大手銀行の中で、新生銀行の立ち後れは目立つ。りそなホールディングスやあおぞら銀行(旧日本債券信用銀行)が、今年の株主総会後に公的資金を完済し、配当を増やすのに対し、新生銀行は返済時期のメドが立たず、1株当たり年間1円という低配当を続ける。

連結配当性向は2015年3月期3.9%、2016年3月期の予想利益ベースでも3.8%だ。こうした状況に不満を持つ複数の株主から、「公的資金を返せる株価はいくらか」「私が買った株価574円には、あと何年経てば戻るのか」「世間一般の(企業だと)配当性向は30%ぐらい。1円配当は低すぎないか」「内部留保で自社株買いをしたらどうか」と、株主還元の改善を求める発言が相次いだ。

目標株価は450円?

株主総会前日、6月16日の株価の終値は242円。当麻社長は総会の場で、「政府が公的資金注入額を国民負担なしで回収できる株価は450円前後。また、公的資金注入時の金融大臣、谷垣さん(現・自民党幹事長)が、国会答弁で回収額はこれくらいにしたいといった額は、株価に換算すると700円ぐらい。ここまで株価を持ち上げることは、一朝一夕にはいかない」と説明した。

当麻社長からバトンを引き継ぐ工藤社長。就任当初から重い課題を抱える(撮影:今井康一)

当時の金融担当大臣が述べたメドには株価が倍以上になっても、なお届かない。目の前のハードルはそうとう高い。当麻社長は「とにかくそれ(公的資金返済)に向けて態勢を整える。株価を上げていくのに何が必要か、いろいろ検討している。ご指摘のあったように、自社株を買って消却するのも1つだと思う。そういうことも含めて、株主還元を考えていきたい」と話すのがやっとだった。

株主総会の所用時間は1間40分。取締役の選任など7つの議案はすべて可決された。当麻氏からバトンを引き継いだ工藤英之社長は総会の最後、「独自性の高いビジネスモデルを構築することで、金融サービスグループとしての存在意義を発揮し、経営の安定性・成長性を高め、株式価値を継続的に向上させるとともに、着実な内部留保の蓄積を行っていく。こうした努力で、早期に公的資金返済の道筋をつけるとともに、株主還元の改善をめざしたい」と語った。

公的資金の完済や1円配当からの脱却など、国や個人株主の不満を解消するためには、独自のビジネスモデルを確立して、結果を出すしかない。今後、地方銀行でもなくメガバンクでもない、新生銀行としての存在意義をどれだけ発揮できるか。それを実現できなければ株主の苛立ちは募る一方だろう。

福田 淳 東洋経済 記者

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ふくだ じゅん / Jun Fukuda

『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などを経て編集局記者。

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