新生銀の工藤次期社長、「公的資金」を語る 注入から約15年、いつまでに完済するのか

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近年は収益が黒字化しているが、リーマンショック後の巨額赤字が尾を引いて公的資金の返済が遅れている(撮影:今井康一)

1998年に経営破綻した「日本長期信用銀行」が公的資金注入を受け、「新生銀行」となって再スタートを切ったのが2000年6月。それから15年が経ったが、なお公的資金完済のメドは立っていない。ほぼ同時期に公的資金を注入された他の大手行、りそなホールディングスや、あおぞら銀行(旧・日本債券信用銀行)が、この6月の株主総会後に公的資金を完済するのに比べて、立ち遅れている。6月17日の株主総会後、新生銀行の社長は当麻茂樹氏から工藤英之・現常務執行役員に交代する。66歳だった当麻氏から51歳の工藤氏へ15歳若返る。工藤氏は新生銀行をどのように再生していくのか。

――新生銀行は、大手行で唯一、公的資金完済のメドが立っていない。

理由は2つぐらいある。1つは、当麻社長が就任する直前の2期に、連続して大きな赤字を計上したこと(2009年3月期に1430億円、2010年3月期に1401億円の連結最終赤字)。これが痛かった。もう1つは、これまでにいろんな買収をしてきたが、その買収の対象自体は間違っていなかったものの、当時の市場環境もあり値段が高かった。そのことが後々の重荷につながっていることは否定できない。

――どのように公的資金を返済していくのか。

直近5期で2000億円ほどの利益を積み上げた。その中には、株価上昇や不動産価格上昇による一時的要因があったことも事実。これからは利益の絶対額を追求すると同時に、利益の質が問われる。持続可能なもの、安定的なものの構成比を高めていく。そうなれば株式市場での評価も高められると思う。

こうして利益を積み上げ、株価を上げていく努力と並行して、どういうスケジュールでどうやって返済していくのか、当局と相談していく。当局との協議なので、その内容や、協議をしているかどうかは申し上げにくいが、相当なスピード感でやっていく必要があると思っている。

消費者金融でレイク以外の新ブランドも

――返済すべき公的資金は、注入簿価ベースの残額2169億円か。それとも政府が確保目標額として示した3493億円か。

われわれの認識自体が変わっているわけではない。政府は後者でお考えなのだろうと理解している。われわれとして、この点が当局との重要なディスカッションポイントだとは思っていない。そんな段階まで行っていない。安定性・成長性のある事業計画を作って当局に示すということを、いま一生懸命やろうとしている。

――そのような事業計画をどう作っていくのか。

まず、部門長以上の経営陣が、正しい状況認識と正しい課題設定を共有できるよう、議論を深めている。新生銀行は、似たような銀行がほかにない。メガバンクとも、地銀とも違う。いくら憧れたって、同じようにはなれない。歴史も特殊だし、規模も人も拠点数も全然違う。われわれが今どういう状況にいて、何が得意で、何が不得手か、その共通認識をみんなが持って考えていくことが第一歩だと思う。トップが一人で騒いでいてもしょうがない。まず部門長以上の経営陣が共有し、それを部長や若手も共有するように、みんなを巻き込んでいくことが必要だと思っている。

――新生銀行が今後伸ばしていこうという事業は何か。

預金、投信、住宅ローン、消費者金融、クレジットカードなど、個人に幅広く金融商品・サービスを提供できている。買収した成果で、顧客基盤も違う。ただ、それらの連携がまだ十分でない。たとえば銀行の客に消費者金融を紹介するなど、顧客基盤のさらなる高度利用をやっていこうという発想がある。そのためには、現在の消費者金融ブランド「レイク」とは別のブランドのほうがいいのではないかという議論もしている。

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