損保4社「政策株ゼロと営業協力見直し」の前途多難 「ごまかしと過剰な協力」に金融庁が目を光らす

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その一つが、日産自動車だ。損保大手4社にカルテル問題で行政処分が下される数日前、日産は損保各社にある提案依頼書を送っている。その依頼書は、故障車のロードサービスなどを提供する「日産カーライフ保険(通称・ニカホ)」で、次期契約更改の入札に向けて、拡販に向けた損保としての施策や販売手数料の水準などをまずは提案しろという内容だった。

実はその中に、契約シェア1%当たりの「車両紹介自主目標(台数)」という目を疑うような項目があったのだ。車両紹介とは、損保が自動車の購入希望者の情報を集めて、系列の自動車販売店(ディーラー)に紹介すること。つまり、契約シェアを高めたいのであれば、自主目標という体裁で示した台数の紹介を日産側に約束しろと言いたいわけだ。

カルテル問題が世間を騒がせ、競争を歪める営業協力が問題視されている状況にもかかわらず、大手自動車メーカーが悪びれることなく堂々と損保に求めていたところを見ると、これまでの悪弊を断ち切ることがいかに難しいかがうかがい知れる。

損保側も旧態依然の発想

今後金融庁は過剰な営業協力の取り締まりに向けて、監督方針の改定を検討している。

足元では「損保ジャパンがディーラーに車両の大量購入を持ち掛けたり、他社が断った販売イベントへの人員派遣を二つ返事で引き受けたりといった本業支援策で、営業攻勢をかけている」といった声も漏れる。ただそうした営業協力は、保険業法が禁じる「特別利益の提供」と金融庁はみなす方針だ。

自浄作用が期待しにくいような状況で、損保と企業の関係は果たして正常化に向かうのか。保険料カルテルに疑いを持ち東京海上に問いただしたことで問題発覚の契機を作った東急グループでは、契約更改で提示した補償条件に損保側が難色を示し、更改が期限ギリギリの2月末までずれ込んだ。

現場の混乱は収まるどころかさらに広がる気配をみせている。

中村 正毅 東洋経済 記者

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なかむら まさき / Masaki Nakamura

これまで雑貨メーカー、ネット通販、ネット広告、自動車部品、地銀、第二地銀、協同組織金融機関、メガバンク、政府系金融機関、財務省、総務省、民生電機、生命保険、損害保険などを取材してきた。趣味はマラソンと読書。

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