損保4社「政策株ゼロと営業協力見直し」の前途多難 「ごまかしと過剰な協力」に金融庁が目を光らす

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もし看板を掛け替えただけの対応にとどまれば、投資家などから批判が噴出する可能性があるものの、検証は早くて6年後だ。そのころには世間の関心が薄れており、また検証をしようにも「この株は純投資だ」と損保が言い張れば、その主張を覆すのは簡単ではない。

損保がそうした小手先の対応でお茶を濁すのではないかという懸念が浮上するのは、同じ保険業界で実例があるからにほかならない。国内生命保険大手4社の株式保有額(時価ベース)は、2023年末時点で合計約22兆9000億円。そのうちのおよそ半分を持つ日本生命では、保有する株式の92%(2022年度)を純投資目的と整理している。

巨大な機関投資家でもあり、多くの地方銀行の大株主にもなっている「日生と明安(明治安田生命保険)は、株主であることをアピールして陰に陽に拡販の圧力をかけてくる」(地銀幹部)という。であれば、実質的には取引関係の強化を狙った政策保有株であるはずだが、その地銀株も保有目的はあくまで純投資だ。

金融庁
金融庁は監督方針を改定し、損保による企業への過剰な営業協力を撲滅させる方針だ(記者撮影)

そうした実例があるだけに、金融庁は損保大手4社に対して、政策保有から純投資への看板の掛け替えといった小手先の対応は、一切認めないとはっきりと告げているようだ。さらに、逃げ道をふさぐための方策を「まずは業界として考えて提出するよう指示してきている」(大手損保役員)という。

金融庁がそこまで圧力を強めなければいけないほど、政策保有株をゼロにする難易度は高いといえる。今後、その余波が生保業界にも及ぶ可能性がある。

営業協力をあからさまに求める日産

2つ目の理由は、契約する企業側の姿勢が変わりにくいこと。企業としては自社の株式をより多く保有し、営業協力として商品やサービスを積極的に購入してくれる損保を契約で優遇したいというのが本心だ。

そうしたスタンスを企業側が前面に出すことは取引関係を歪める。その結果、入札で勝負しても意味がないと、損保がカルテル行為に及ぶことにつながっていった。金融庁はこの構図を問題視し、損保を通じて企業に警告を発しているのが現状だ。

にもかかわらず、いまだにあからさまな営業協力を求め、協力度合いが次期契約更改で取引シェアに影響するかのようににおわせる大企業が後を絶たない。

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