セブン、そごう・西武に続きヨーカ堂売却を検討 売却先として名前が浮上する投資ファンド2社

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もう一つの売却先候補であるKKRは、自動車部品のマレリ、会計ソフトの弥生、半導体製造装置などを手がけるKOKUSAI ELECTRIC(すでに他社へ売却済み)など、日本企業への投資を積極化させている。

スーパーでは、西友ホールディングスの親会社でもある。2021年にアメリカのウォルマートから西友株65%を取得。2023年5月には楽天グループから20%を買い取り、今や西友株の85%を握る。

しかし西友は、基幹システムをウォルマートのものから自前のものへ更新して以降、障害を起こすなど苦戦している。そのため西友は、イトーヨーカ堂の店舗網もさることながら、システムなどにも興味を示していると見られる。

実は、2022年からセブン&アイの社外取締役を務めているスティーブン・ヘイズ・デイカス氏は、ウォルマートのシニア・ヴァイス・プレジデントや西友のCEO(最高経営責任者)などを歴任した人物で、西友には詳しい。金融筋をはじめとした関係者はその組み合わせに注目している。

問題は企業価値の向上策

ただ問題は、投資ファンドに売却した後、いかに改革して企業価値を向上させるかだ。

2023年にセブン&アイに株主提案したアクティビストのバリューアクト・キャピタルは、「イトーヨーカ堂はセブン&アイが設立された2005年から18年に渡り構造改革と言い続けたが成し遂げることができず、結果、2500億円以上に上る特別損失を計上した」と主張していたように、イトーヨーカ堂の改革は容易ではない。

そうしたなか、イトーヨーカ堂の経営再建に関するアドバイザーだったフロンティア・マネジメントの創業者で社長を務めていた松岡真宏氏が、2月14日に突如、代表取締役を退任した。一部には、執行役員人事をめぐる社内対立に嫌気が差したとの観測も流れるが、セブン&アイとは付き合いも長くイトーヨーカ堂を知り尽くしているだけに、今後もこのディールに何らか関与する可能性もある。

また、セブン&アイ社長の井阪隆一氏は、社長就任時から創業家と親密な関係にあり、容易にはイトーヨーカ堂を売却できないのではないかとの見方もある。そのため創業家に配慮してイトーヨーカ堂の全株式ではなく、一部について売却する可能性なども囁かれており、事態は流動的だ。

4月にも予定されている2024年2月期決算の発表時に何らかの発表があると見られているが、しばらくの間、水面下での調整が続きそうだ。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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