韓国・EU間で自由貿易協定(FTA)が発効![前]--日本企業は韓国に流出するか

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 このように、つまり、製品の国内基準などの非関税障壁については、国際的な基準や相手国の制度を自国においても認めることで、引き下げる努力をしている。日本ではFTA=農業問題ととらえられることが多いが、むしろサービス分野・非関税分野が最も大きな課題になると考えられ、韓国とEUとのFTAにおけるこれらの規定は、今後、日本がEUとFTAを交渉する際に参考になるだろう。特に医療分野での規制の調和などは大きな議論を呼ぶこととなると考える。

FTAカバー率で韓国に大きく遅れる日本

今回のEUとのFTA発効により、韓国は、チリ、シンガポール、EFTA(欧州自由貿易連合)、インド、ASEAN、EUとのFTAが発効済みとなった。これによって、貿易総額に占めるFTA相手国との貿易額の比率は、29%となる。韓国はさらに、米国、ペルーとのFTAは署名済みであり、日本(04年より中断中)、カナダ、メキシコ、GCC(中東湾岸諸国)、ニュージーランド、豪州、コロンビア、トルコなど、貿易額が大きい国・地域とのFTAを進めている。

一方、日本のFTAへの対応は遅れている。10年末月時点でメキシコ、チリ、スイスにASEANを加えた11の国・地域とFTAを締結し、発効しているが、FTA締結国との貿易総額はわが国の貿易総額の16.5%にすぎない。日本の主要貿易相手である、中国・香港(貿易総額に占めるシェア20.5%)、米国(同13.5%)、EU(同11.6%)とのFTAについては、ようやくEUとの交渉の入口にたどり着いただけで、中国、米国とはまだ何も着手できていないか共同研究をやっと始めたばかりだ。米、EU、ASEANという巨大貿易相手国とのFTAを重点的に進めた韓国とは、大きな差が生じてきていると言わざるをえない。

ちなみに、FTA締結が最も進んだスイスは貿易の89.3%が、メキシコは81.4%がFTAの対象であり、米国は37.5%、EU29.8%(対域外、EU域内を含むと76.4%)、豪州24.9%、中国21.9%である。日本の貿易自由化率16.5%はいかにも低い。なぜ、このような差が生じるのだろうか?

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