インテル「TSMC追撃」150兆円目指す半導体市場 ゲルシンガーCEOが高らかに宣言した「新戦略」
さらに今回Intelは、Intel 14Aという次世代の製造技術を2025年以降に投入することを明らかにしている。このIntel 14Aでは、高NA EUV(極端紫外線)という新しい露光技術を業界で初めて導入し、微細な配線をより容易に現像することを可能にする。従来のEUVの導入ではTSMCやSamsungに数年の後れを取っていたのに比べて、大きく局面が変わりつつあることを印象づける発表だ。
また、TSMCやSamsungのファウンダリにない強みとして、Intelは後工程と呼ばれるチップ組み立て工程も含めてサービスを提供できることをあげる。Intelはそうした後工程の技術として3Dチップレットと呼ばれる複数のチップを3D方向に積層していく技術を、他社に先駆けて大規模に提供を開始しており、今後そうした技術もファウンダリ事業の顧客に提供することで、他のファウンダリとの差別化を目指す。
このように、他のファウンダリと競争していく技術的な要素はすでにレディな状態となり、顧客がIntelのファウンダリサービスを利用して半導体を製造するという準備が整いつつある状況だ。
競合するArmともパートナーシップを組む
しかし、そうしたファウンダリ事業の準備が整っても、実際にサービスを利用してくれる顧客企業が現われなければ絵に描いた餅になる。その時にハードルとなるのはIntelの製品部門とIntelファウンダリを利用する顧客企業との利益相反だ。
例えば、データセンター向けのCPUで、Intelの「Xeon」は、AMDの「EPYC」やArmベースのCPUを製造しているAWSの「Graviton」やMicrosoftの「Cobalt」と競合している。仮に、AWSやMicrosoftがそうしたArmベースのCPUをIntelのファウンダリを利用して製造したいと言ってきて、それがIntelブランドの製品を駆逐してしまったらどうするのか?
Intelの答えは「それで問題ない」だ。昨年9月にIntel DCAI事業部長(当時) サンドラ・リビエラ氏は「Intelとしては、Intel製品と競合する製品であって、市場でIntel製品がそれらの製品に負けようがIntelファウンダリを利用してもらえるなら問題ない」と、製品事業を率いるトップ自身が明快に答えている。
今回のイベントでも、Intelの幹部は盛んにCoreやXeonを販売する製品部門とファウンダリ部門の間にはファイアウォールを設けて、社内であろうとファウンダリ事業顧客の情報がやりとりされることはない、利益相反は絶対に起こさないと強調している。また、そのArmのライセンスを顧客に提供しているArm社のレネ・ハスCEOをゲストに招き、顧客がArmのライセンスを利用してIntelファウンダリで製品を製造することを両社が協力して助けていくというパートナー関係を強化することを明らかにしている。
このように、Intelはたとえ自社ブランドの製品にとって不利であろうと、ファウンダリ事業を強化していく姿勢を見せており、当初は懐疑的だったIntelの競合企業もIntelファウンダリの活用に向けた考え方を変えつつある。実際、AI製品でIntelと競合しているNVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、昨年の6月にIntelのファウンダリを検討していることを明らかにしている。
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