重度障害者を支える元パナ技術者開発のスイッチ 「アメリカ製品の廃番」の危機を受けて製品化

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

母親の萌さん(33歳)が訪問リハビリのヘルパーと相談しながら、100円ショップで買ってきたドアストッパーを改造してスイッチを製作。計15個ほど試したが、どれもメリサさんの手になじまなかった。

困っていたところ、松尾社長のプロジェクトを知って即購入。メリサさんはすぐに使いこなし、ハーフスイッチは日常生活や学習になくてはならない必需品となった。萌さんはこう語る。

「娘と同じようにスイッチで苦労する患者は大勢いると思います。しっくりくる物に巡り会えて本当に助かりました。メリサの夢は、ディズニーランドへ行ってミッキーマウスとお喋りすること。実現のために、このスイッチで学校の授業を頑張って、言葉をたくさん覚えてほしいです」

スイッチ
メリサさんがこれまでに試した数々のスイッチ(記者撮影)

家電操作リモコンも商品化

少し照れくさそうな表情を浮かべながら、記者の前でiPadなどの電子機器を操るメリサさん。その姿を満足そうに見つめる松尾社長は2023年12月、重度障害者向けのスマートリモコン「リモコンエール」を発売。誰でもスイッチ1つでテレビのチャンネルや音量を自在に変えられるようになった。

このリモコンはiPhoneなどにつないで使用する。今後のアップデートでエアコンや照明など、ほかのさまざまな電化製品にも対応するという。iPadで使用できる廉価な意思伝達装置のアプリなど、さらなる新製品も開発中だ。

「私は医者ではないので、障害や病気を治すのは不可能です。それでも、患者さんの生活が少しでも豊かになるよう、できることを1つでも増やしてあげたいんです」

そう意気込む松尾社長の挑戦は、まだまだ終わりそうにない。

石川 陽一 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いしかわ よういち / Yoichi Ishikawa

1994年生まれ、石川県七尾市出身。2017年に早稲田大スポーツ科学部を卒業後、共同通信へ入社。事件や災害、原爆などを取材した後、2023年8月に東洋経済へ移籍。経済記者の道を歩み始める。著書に「いじめの聖域 キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録」2022年文藝春秋刊=第54回大宅壮一ノンフィクション賞候補、第12回日本ジャーナリスト協会賞。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事