重度障害者を支える元パナ技術者開発のスイッチ 「アメリカ製品の廃番」の危機を受けて製品化
上肢の不自由な人が電子機器を使用するためには、その人の症状に合わせた入力スイッチが欠かせない。
あまり知られていないが、iPhoneやiPadにもスイッチコントロール機能は搭載されている。カーソルが画面上を動き、外付けのスイッチをタイミング良く押すことで、各種アプリを操作できるのだ。
一方、これらの適合には①動く体の部位の特定、②そこで押せる固さや形状のスイッチを選んで装着――というプロセスが必要。専門的な知識が求められる。
患者を訪問支援して磨いた技術
2023年12月17日配信『元パナ技術者「重度障害者に言葉を取り戻す」挑戦』で詳述したように、アクセスエールの松尾光晴社長は、パナソニックの元技術者だ。
会社員時代から今日までの20年以上にわたり、計1000人以上の患者を訪問支援し、適合技術を磨いてきた。障害者向けスイッチの第一人者とも言える存在だ。蓄積した見識を自身のホームページ「マイスイッチ」で無料公開している。
例えば、脳性マヒやパーキンソン病の患者。指先の震えが止められず、安定して押せないことも多い。ただ、力はグッと込められるので、誤入力を防ぐために小型で固いスイッチが適している。アメリカメーカー製の「トリガースイッチ」という商品が、医療や福祉の現場で広く使われていた。
ところが、2021年11月にこの商品が廃番となった。市場規模の小ささから採算を取りにくいために、国内で似たような物を作っているメーカーも皆無。「一部の患者にとっては『唯一無二』の存在でした。何とかしなければ、皆さんの生活が立ちゆかなくなってしまう」(松尾社長)。
こうした危機感から、松尾社長は代替品の開発を決意。クラウドファンディングで資金を募ると、309人の支援者から約350万円が集まった。
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