「内向型の人」が強みを生かして成果を出す働き方 アップルの成功も「内向型」の力が導いた
「自分の内面」と向き合って独創性を発揮した人物としてはジョン・ナッシュが挙げられます。
ナッシュは天才数学者で、ある状況での複数のプレイヤーの行動を予測する「ゲーム理論」の研究で知られています。どのプレイヤーも相手との協力なしにこれ以上利益を増やせない状態では現状維持状態が発生するという「ナッシュ均衡」を提唱し、この成果で1994年にはノーベル経済学賞を受賞しています。
彼は1928年に技術者であった父と教師であった母の元に生まれます。典型的な内向型で人と打ち解けるのが苦手であった反面、科学や実験には強い興味を持つ好奇心旺盛な性格でした。大学では化学や数学など専攻を転々とし、やがて経済学に興味を持つようになりました。
天才も凡人も、人の幸せは「自分らしさ」にある
彼の半生は2001年に公開された映画『ビューティフル・マインド』に凝縮されています。映画は1947年、ナッシュがプリンストン大学の大学院に到着したところから始まります。数学によって世界を支配する真理を見つけたい、真に独創的な着想を見つけたい、と授業に出る暇も惜しんで研究にひたすら没頭する姿が描かれています。
遊びや恋には目もくれない、風変わりなまでに純粋な精神には同じ内向型の私も魅了されました。主演のラッセル・クロウが内向的な学者になりきり、不安定な心を巧みに演じていたのも印象的です。
映画でナッシュの内向性を感じさせる象徴的なシーンがあります。ナッシュは女の子とまともに口がきけないほど社交下手で、合コンでもどうすれば意中の女性に好かれるかを数式で計算するような人物として描かれています。
しかし、ルームメイトのチャールズとだけは気が合いました。チャールズはナッシュと正反対の明るい性格でしたが、彼の唯一の友で理解者でした。
チャールズの助けもあって、ナッシュは行き詰まっていた論文に活路を見いだします。その論文が教授に認められ、志望していた研究所にも就職できます。映画のネタばれにもなりますが、実はこのルームメイトはナッシュが自分の中につくりあげた「他人」です。「自分はこうありたい」という他者を自分の中につくりあげて、対話することで彼はつらい状況を生きることができたのです。
ナッシュは孤独の中で自分の内面をのぞき続けることで、独創性を発揮し、数学的な難題を次々に解決していきます。そして、ノーベル賞も受賞します。
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