中小企業が賃上げを実現するために必要なこと 大企業は昨年以上のベースアップが見込まれる
浅尾慶一郎氏(参院議院運営委員長、自民党前政調会長代理):いま人手不足が顕著だ。基本的には人を採るために賃上げをしないといけないというのが大前提としてある。賃上げができる会社、どちらかというと大企業中心だが、今年のベースアップは去年以上になるだろう。今回は物価上昇率を超える賃上げに、大企業は間違いなくなると思う。問題は、多くの人が働いている中小企業が、果たして本当に賃上げができるのかどうかだ。基本は粗利を上げないと難しい。要するに日本の経済の根本体質、過当競争のところがあるので、特に中小企業の統合を進めていく。そういう形で粗利率を上げられるようにしていくことが大事ではないか。長い目で見れば、もちろん今ないものを作っていくことが大事だが、短期的にできるのは粗利率を上げる話だ。
要は価格競争力がなぜないか。それは過当競争で「いいよ、お宅に頼まなくても、こっちでできるから」というところがある。日本の場合はもう少し中小企業も含めて事業統合をして価格競争力を持つようにする。要するにそこに頼まなかったら、仕事をやってもらえなかったら、値上げを認めざるを得ない。その後押しを政治がやっていく。
中小企業の賃上げには、事業統合の推進が必要
橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):中小企業も統合していく、淘汰(とうた)を促していくということか。
浅尾氏:淘汰というより統合だ。そうすることで価格競争力が出てくる。跡継ぎがいないから(事業を)やめるというところが出てきて、そういうところは事業を売るようになってきている。それに対して税を使って統合を促していくことが大事なのかなと思う。もう一つは、例えば、M&Aをやっていく。地域の金融機関は中小企業の情報をいっぱい持っているから、それを全国的にうまくつなげるような形に引きとっていくことが必要なのではないか。
松山キャスター:株式市場の活況ぶりとは対照的に、日本の世帯あたりの可処分所得はG7(主要7カ国)で最下位という現状がある。消費を喚起させるためには、可処分所得、つまり手取り収入を上げなければいけない。
後藤氏:それは当然、企業の努力も必要だが、国民一人ひとりの意識改革もすごく大切だ。政府なんとかしてくれ、企業賃上げしてくれ、と文句を言うだけではなく、自分自身でどういうところで活躍できるのか、場合によっては転職していくという手段もある。人手不足、AI(人口知能)で働き方がどんどん変わってくる中で、意外な転職先が広がってくると思う。いま実際(転職する)20代、30代の人は増えている。政府頼み、企業頼みではなく、一人一人がどうやって稼ぐ力を高めていくかという意識、他人頼みではなく考えていくことは結構大事だ。ちょっと言い方は悪いかもしれないが、そういう時代に変わってきている。