「大雪の通行止め」が露わにした判断の困難さ 246に甲州街道…一般道も閉鎖で大渋滞に

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ただし、これまでと違うのは、降雪量と積雪量である。1月24日は6時間の最大降雪量は49cmとなり、過去最高となっている(なお、降雪量ではなく積雪の記録としては、2年前の2022年2月の87cmが過去最高となっており、近年雪の降り方が激しくなっていることを表している)。

地球温暖化の影響もあってか、近年日本海の海水温が高いため、北西の季節風は大量の水蒸気の供給を日本海から受けて前例のない雪を降らす。今回、起きた大規模な立ち往生には、そうした背景が考えられる。

大雪のときに「どのような社会」を目指すのか

新名神が通行できるようになり、関西と東海地方の往来には四日市・亀山・鈴鹿峠ルートが新たに加わったとはいえ、まだまだ名神は日本の流通を担う大動脈であり、閉鎖の判断はかなりの慎重さが求められる。

たとえ100台のクルマのうち、99台が雪道に慣れていて装備が万全だとしても、1台不慣れなクルマがあり一度でもスタックすれば車列は一気に延びる。しかも、尋常ではない降雪があると、1時間停まっているだけで雪はタイヤを埋め、スタッドレスであろうがチェーンを巻こうが動けなくなる。

スタッドレスタイヤを履いていても雪の日の外出は慎重に判断したい(写真:Mugimaki / PIXTA)
スタッドレスタイヤを履いていても雪の日の外出は慎重に判断したい(写真:Mugimaki / PIXTA)

今回の立ち往生で「閉鎖の判断が遅かった」と一方的に高速道路サイドを責められないのも、これまでにない尋常な降雪の量や、食材をはじめとした生活物資の多くを、手の届く範囲ではなく日本中、あるいは世界中に頼る「物資の輸送依存」体質が、これまでの常識を変えつつあることを考えてしまうからである。

降雪時の高速道路閉鎖に対する「こうすれば大丈夫」という公式的な正解はない。今年もまだ大雪の可能性が残されているし、来年はさらに観測史上最高の積雪がどこかで生じるかもしれない。

そのとき、私たちは雪に挑んでどんなときにも通れるような社会を目指すのか、それとも道路が閉鎖されて数日通勤できなかったり物流が止まったりしても誰も責めない社会を目指すのか。そんなことまで考えてしまう今年の雪事情であった。

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佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、高崎経済大学特任教授、京都光華女子大学教授を歴任し、現職。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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