ワークマン「職人を軽視してる」批判は本当なのか 企業イメージの変化に、消費者が追いついてない

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実際、銀座や梅田など、ユニクロの旗艦店舗のほとんどはガラス張りになっていて、それ以外の店舗でもガラスを主体とした開放性のある空間が作られている。かつてのユニクロは赤煉瓦の壁面に、三角屋根が特徴的な店舗外観が多く、どちらかといえば庶民的なデザインが主流だった。そうした店舗空間をガラス張りのスタイリッシュな空間に変化させてきたのだ。

こうしたガラス張りの建築は、例えばブランドショップやApple Storeのように、ハイソな印象を私たちに与えるが、そのような空間イメージがユニクロに根付いていることもまた、ユニクロのリブランディングに大きな影響をもたらした。

また、スタイリッシュなデザインということでいえば、その商品においてデザイナーコラボを多く手がけてきたことも、イメージアップにつながっているだろう。この源流をたどると、もともと2006年にデザイナーの佐藤可士和をクリエイティブ・ディレクターに任命したあたりから、そうしたデザイン的な洗練度も増していった。今ではユニクロのデザイナーコラボの熱烈なファンも多い。

ワークマンのリブランディングに必要な要素とは

翻って、ワークマンはどうか。

まず、メディア空間の戦略でいえば、やはり吉幾三のCMの印象はまだまだ強い。代わりに放映が開始された「WORKMAN Plus」のCMをぱっと思い浮かべることのできる人はどれぐらいいるだろうか。

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さらに、店舗空間にしても、プレハブ倉庫のような外観の店舗が多く、どこかしら「現場」感がある。「WORKMAN Plus」に変化させた店舗でも、そのままその建物を使っている場合が多い。かつてのワークマンであれば、これがいい方向に働いていただろうが、アパレルを目指す現在ではどうか。

リブランディングは、非常に難しい。特にワークマンのように良くも悪くも根強いイメージを持っていた企業にとってはなおさらだ。そんな難しさを乗り越えて、ワークマンは「アパレル」に変貌することができるのか。カギは、「メディア空間」と「店舗空間」という2つの空間にある。

谷頭 和希 チェーンストア研究家・ライター

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

チェーンストア研究家・ライター。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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