自民「茂木派」が分裂状態で総裁選出馬に暗雲も 「政策集団」への移行に渦巻く不満と不安

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その一方で、茂木派の過去を振り返ると「歴史的に参院議員の力が強く、参院茂木派は『鉄の結束』を誇示してきた」のは事実だ。ただ今回は、多くの参院組がすぐ関口氏らについて行くという状況とはなっていない。「派に残ったほうがいいのか、小渕氏について行ったほうがいいのか、みな様子見」(派関係者)とされ、事態はなお流動的だ。

小渕氏が安倍派の事情聴取役でネット炎上

そもそも、早くから「初の女性首相候補」と目され、2023年9月に党4役の選対委員長に起用された小渕氏には「ドリル事件」という“過去”がある。2014年10月、当時経産相だった小渕氏の収支報告書への虚偽記載が発覚した際、ドリルで壊されたパソコンのハードディスクが見つかって証拠隠滅の疑いが指摘され、以来「ドリル優子」と揶揄され続けてきたからだ。

自民党は、裏金事件に伴う安倍派の政治資金収支報告書訂正を受け、2日から関係議員の聞き取り調査を始めた。その事情聴取メンバーにわざわざ小渕氏を加えたことについて、党内では「茂木氏の嫌がらせ」(自民長老)との見方が少なくない。

確かに、聴取メンバーの中心は森山裕総務会長だが小渕氏が脇を固めているため、インターネット上には「ドリル優子が聴取する側!」「なんという悪い冗談!」などの書き込みが相次ぐなど炎上状態となった。

この事情聴取は安倍派幹部の「処分」を視野に入れたものだが、司令塔の茂木氏は2月1日のBSフジ LIVE プライムニュースで、「今までは刑事事件などで立件されるときに離党や離党勧告(の処分)をしてきた」として離党勧告にまでは踏み込まない考えを示唆した。

野党側は、自民党がコロナ禍の緊急事態宣言中に東京・銀座のクラブを訪れた松本純元国家公安委員長らに離党勧告したことなどから「今回は離党どころか議員辞職が必要」と主張しているが、茂木氏は「これまでの処分歴を見ると、(銀座のクラブの件は)若干重すぎる」との判断を示して「安倍派への配慮」をにじませた。

その一方で、茂木氏は同番組で今秋の党総裁選について、「現在の自民党の状況は『室町末期』だ。派閥の連合体という封建体制が崩れる状況だから、まだ(織田)信長も表に出ていない」と指摘。「ここから群雄割拠の時代に入るだろう」と思わせぶりに語った。ただ、党内からは「その前に、まず足元を固めるのが先決」(閣僚経験者)との厳しい声も相次いでいる。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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