窮地の国産「和紙原料」から誕生した菓子の正体 お菓子とお茶で地元産の楮(こうぞ)を支援

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私も食べてみた。正直、味はふつう。「おいでなせえ」の担当者、五十嵐康博さんは、「確かに、特徴が強くある味ではないんですよ。でも、栄養成分調査をしたところ、新芽は非常に栄養価が優れていることがわかったんです」。日本食品機能分析研究所(福岡県)による調査で、ホウレンソウに含まれる栄養素に比べ、カルシウムは約5倍、ポリフェノールとタンパク質はそれぞれ約3倍含まれていることがわかったという。

スカイツリーに来た人に声をかけ、試食してもらった(撮影:河野博子)

実は五十嵐さんと西川研究室は、夏に採れる楮の葉っぱを天ぷらにしたり、木の芯をおみくじの棒にしてみたり、いろいろと試してきた。

なぜなのか。楮の原木のうち、和紙の原料として使われるのは、樹皮の部分だけ。原木全体からみると、約15%とされる。和紙原料として使われない部分の用途を見つけ、需要を掘り起こせば楮づくりが盛んになるのではないか。五十嵐さんと西川准教授は、そう考えた。

ガレットは1つ160円。原料の新芽は、町が年250万円の補助金を出して埼玉県小川和紙工業協同組合が育てている楮畑から提供を受けた。「どういう仕組みを作ればいいのか。売れるかどうかを見ながら、これから町と相談して考えていきます」(五十嵐さん)という。

ユネスコ無形文化遺産に指定された細川紙の製作技術

埼玉県小川町の小川町和紙体験学習センターの裏庭に、なんともいい香りが漂ってきた。最初は草の香り、そのうち芋をふかしたような香りがフワーっと。「かしき開け」「釜開け」というそうだ。90㎝の長さに切りそろえた楮を釜に入れ、2~3時間蒸す。釜から出して、熱いうちに皮をむく作業を行う。

1月28日の日曜日に行われた細川紙技術者協会(内村久子会長、正会員8人)の作業で、研修員を含め15人ほどが集まった。細川紙はもともと、紀伊高野山のふもとの細川村ですかれていたものだが、埼玉県の比企、秩父地方でも作られた。埼玉県小川町と東秩父村に伝わる細川紙の製作技術は、1978年に国の重要無形文化財、2014年にユネスコの無形文化遺産に指定された。国産の楮を使うことが指定の要件になっている。

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