「オードリー」東京ドーム公演に導いた若林の異能 大成功しても残る、売れなかった頃のくすぶり感

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さすがに仕事で付き合いの深い2人だけあって、話に説得力がある。上辺では社会人らしく振る舞えるようになってきているものの、本質は変わっていないというのだ。

私もその通りだと思う。『オードリーのオールナイトニッポン』でも、いまだに若林らしいとがった部分をチラッとのぞかせるようなトークをすることはあるし、そういうときの彼は抜群に面白い。

にじみ出てくる荒々しい心の声

恐らく、若林の頭の中では、今でも「うるせえよ」とか「ケッ」とか「ふざけんな」とか、そういう荒々しい心の声が鳴り響いている。そして、それがときどきラジオのトークでにじみ出てくる。

若林は、芸人として、タレントとしてこれだけ成功していても、いまだにテレビの中で「どこか居心地悪そうな感じ」を完全には消していない。でも、そこがいい。

前述の山里と安島の対談でも、若林について、山里は「面白くなかったら最低の人間」と言い、安島は「面白くなかったら人間のクズです」と語っていた。これは、遠回しに若林のお笑い能力の高さを賞賛する言葉でもある。

『オードリーのオールナイトニッポン』が根強い人気を博している最大の理由は、若林の「ポップなやさぐれ芸」が、多くの人の心に刺さる普遍的な魅力を備えているからなのだ。

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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