「オードリー」東京ドーム公演に導いた若林の異能 大成功しても残る、売れなかった頃のくすぶり感
こういったエピソードのひとつひとつが、貧乏芸人の悲惨で壮絶な話として紹介され、注目を集めた。そして、貧乏でも明るくポジティブにそれを乗り越えようとする春日の生き様も話題になった。
そんな中で『オードリーのオールナイトニッポン』では、若林が主体となってトークを進めていた。それが当時は画期的だった。個人的には、初回から面白いと思って聴いていたし、それ以前からも若林のトークには注目していた。
オードリーがテレビに出始めた2008年頃に、私はオードリーが出演するインターネット番組『そらを見なきゃ困るよ!』(GyaO)をチェックするようになった。そして、ここで若林という芸人の独特の面白さに目覚めた。
別次元の飛び抜けた魅力
若林は進行役として器用に番組を回していたし、披露するエピソードもひとつひとつが面白かった。でも、器用で面白いだけの芸人ならほかにいくらでもいる。このときの彼には、もっと別次元の飛び抜けた魅力があった。
それを言葉にするのは難しいが、あえて言うなら「ポップにやさぐれている」という感じだろうか。そこに強くひきつけられた。
この時期に私が見ていたのは、ずっと売れなくてくすぶっていて、何かにつけてあれこれ思い悩んで陰鬱な表情を浮かべている若林の姿だ。未来に希望も持てず、余計なことばかり考えて、売れることを半ばあきらめているような言動を繰り返す。
でも、決して投げやりではなく、聞いていられないほどネチネチとグチっぽいわけでもない。その語り口や態度に人をひきつけて離さない魅力があった。自分と同世代ということもあり、若林には親近感を覚えていた。
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