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政治・経済・投資 #ウクライナ侵攻、危機の本質

バイデンの存在薄くなる3年目のウクライナ戦争 「ロシアが攻めてくる」欧州の危機感に応えられない

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  • 吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長
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NATOに未加盟のウクライナを支援するうえでの現在の法的根拠は、侵攻が国連憲章違反であるという1点のみだ。この2国間の安保協定体制が各国に広がれば、ウクライナを守る国際的条約体制がNATO加盟までの間とりあえずできることになる。

今回の安保協定の締結により、イギリスは欧州でウクライナ支援での明確なリーダーとなった。ワシントンと電話で協議することが多かったウクライナ政府高官が、今はロンドンに電話して相談するケースが目立って増えている。

ここで問題は、現時点ではウクライナにとって最大の支援国であるアメリカの動向だ。バイデン政権は2023年末までの段階でキーウとの間で安保協定の交渉を終える予定だったが、軍事筋によると、中断してしまったという。

欧州安保でのアメリカへの不安

こうした事象が指し示すことは何か。それは、欧州安保の保障者としてのアメリカの地位および信用度の低下である。

そのため欧州では、2国間安保協定以外にも「自らの平和は自らの手で守る」という覚悟を示す行動が広がっている。象徴的なのが2024年1月末にバルト3国やポーランドを主な舞台として始まった冷戦終結以来で最大規模といえる軍事演習だ。

ロシア軍による侵攻を想定したもので、9万人規模の部隊が参加する。NATO演習である以上、アメリカ軍部隊も参加するが、想定といい、演習場所といい、極めてリアルであり、従来の演習以上の危機感が伝わってくる。

2024年に入り、欧州各国の軍部からはロシアによる欧州攻撃の可能性を警告する発言が相次いでいる。ドイツのピストリウス国防相は、ウクライナ戦争がバルトなどに広がる可能性を指摘した。

イギリス軍高官も、現在のウクライナ情勢が第1次世界大戦やナチス・ドイツによる欧州侵攻の前夜に似ていると指摘。イギリス軍の兵力を倍増する必要性に言及した。

しかし、バルト3国やポーランドはウクライナと異なり、NATO加盟国である。NATO条約第5条には、加盟国の1つに対する攻撃は全加盟国への攻撃とみなす、とある。この条項を踏まえ、これまではロシアがアメリカとの直接の開戦を恐れて、バルト3国などを攻撃する事態はありえないとみられていた。

しかし、アメリカの支援を受けたウクライナの反攻をロシアが力で食い止めたことを受け、欧州の認識は大きく変わった。自国の軍事力に自信を持ったプーチン氏がNATO加盟国であるバルト3国でさえも侵攻の対象にするとの懸念が出始めたのだ。

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