「ビッグモーター不正」でSOMPOの役員が大量退陣 自己保身の体質が招いた保険金不正請求の隠蔽

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損保ジャパン会長の西澤氏については、2022年4月に社長ポストを白川氏にバトンタッチしており、不正問題をめぐる責任は小さいとの見方がこれまで多かった。一方で、適正な損害の査定と保険金の支払いという損保の根幹業務を担う保険金サービス部門で、人員を大幅に削減する「抜本改革」を社長在任中に実施。もともと社内力学上弱い立場にあった同部門がさらに弱体化し、BMの不正請求を助長する土壌を生み出した責任がある、と金融庁は指摘する。

他方で、その西澤氏が社長在任中に頭を悩ませていたのが、ほかでもないグループCEOの櫻田氏だった。

櫻田氏は損保ジャパンなど子会社を「事業オーナー制」とし、人事などの権限を委譲して経営のスピードと独立性を高める体制を敷いたはずだった。だが、実態は「櫻田が箸の上げ下ろしにまで神経質に目を光らせ、強引に手を入れようとしてくることが少なからずあった」(損保ジャパン役員)という。

親会社のSOMPOの役員たちも、常に「強いプレッシャーを感じていた」(金融庁)とされ、定例ミーティングなどでの櫻田氏への状況報告を、「『俺は嫌だから、お前が行けよ』と、(損保)ジャパンなど子会社の役員に押し付けるような姿が年々目立つようになった」(損保ジャパン役員)。

バッドニュースが適切に報告されない企業文化

BM不正をはじめとした経営上のバッドニュースが、「適時・適切に報告されない企業文化」(金融庁)は、そうして醸成されていった。さらに、櫻田氏らSOMPO首脳陣のリスク感度が鈍いことから、重大な不正事案に対して親会社として踏み込んだ実態把握や情報分析に動こうとせず、不正による被害を拡大させることにつながっていったわけだ。

櫻田氏は13年間もグループのトップとして、また損保ジャパンの取締役として経営を指揮しながら、金融庁に「機能不全」「崩壊」と断じられるような経営管理体制と内部統制に甘んじてきた。そのことの責任はやはり大きい。

次ページ櫻田氏に引導を渡すことにこだわった金融庁
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