紫式部が女部屋に侵入した男に取った大胆行動 和歌を送った紫式部、書かれたその内容とは?

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さて、人々の罪穢を祓い流す仕事は、本来は陰陽師(陰陽博士)が行うものでした。

しかし、川原に着いてみると、そこにいたのは、紙の冠を坊主頭にかぶり、陰陽師の真似事のようなことをやっている僧侶でした。もしかしたら、その僧侶は陰陽師の真似事のようなことをして、人々から謝礼を受け取っていたのかもしれません。それを見た式部は憤り、前掲の歌を詠んだのではないでしょうか。

若いころから批判精神が備わっていた

陰陽師でもないのに、得々として、お祓いをしている僧侶の態度を嫌らしいと感じたのでしょう。この歌は、式部17歳頃のものとも言われており、式部の心には、批判精神というべきものも、育っていたと言えるでしょう。

(主要参考文献一覧)
・清水好子『紫式部』(岩波書店、1973)
・今井源衛『紫式部』(吉川弘文館、1985)
・紫式部著、山本淳子翻訳『紫式部日記』(角川学芸出版、2010)
・倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社、2023)

濱田 浩一郎 歴史学者、作家、評論家

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はまだ こういちろう / Koichiro Hamada

1983年大阪生まれ、兵庫県相生市出身。2006年皇學館大学文学部卒業、2011年皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門は日本中世史。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『あの名将たちの狂気の謎』(KADOKAWA)、『北条義時』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)など著書多数

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