中国の書店が「親日」であるのにはワケがある 「嫌中本」が売れる日本との決定的な違い

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冒頭で『雪国』を挙げたが、中国人のエリート層の多くは川端康成や夏目漱石を読んだことがあるという人が非常に多い半面、日本人で中国人作家の本を読んだという人は極端に少ない。こうした面からも、(マスコミの報道とは裏腹に)中国人(特に読書を好むエリート層)は日本から学ぶべきものが多い、と考えていることがわかる。

ありそうでない「等身大」

中国の書店では子ども向けの絵本なども多数売られているが、絵や装丁も含めて、正直言って「かわいい」と感じるものは少ない。儒教などの影響を受けた、教訓めいたお説教くさいストーリーが多く、「~は~であるべきだ」という論で展開されていて、子どもの心を豊かに育むものは残念ながら少ない。

その点、日本の『窓ぎわのトットちゃん』の中の黒柳徹子の破天荒で明るいキャラクターをはじめ、戦争の悲惨さを描いた『火垂るの墓』でさえ、中国人は「等身大の生身の人間のストーリー」だと肯定的に受け止めている。

書店に同行してくれた友人は、かつて東京に住んでいたことがあったが、そのとき初めて『火垂るの墓』のDVDを見て、兄妹愛の美しさとともに、日本人も戦争で苦労したという事実を知り、「私にとって、一生忘れられない、すばらしい日本の作品」と話してくれて、私のほうが感動した。

「上海書城」に限らないが、中国の多くの書店の1階は、ベストセラー本以外に、料理、旅行、健康関連本やムック、地図などが置かれている。特に最近は中国人の旅行ブームを反映して、旅行本が花盛りだ。その目玉は、日本や韓国といった近場の国である。

日本専門誌「知日」も

上のフロアは芸術、デザイン、建築、軍事、歴史、語学、などの分野に分かれている。階を上がるにつれて人は少なくなるが、日本本はすべからく、各フロアに存在する。アニメの描き方などの本、マンガエッセイなども多数あり、明らかに日本のアニメを意識した内容のものも目立つ。中国初の日本専門雑誌『知日』もあった。

経済・経営本のコーナーには、稲盛和夫、孫正義といった日本を代表する経営者の本がズラリと並んでいる。ほかの書店でも見かけたが、アリババ創始者のジャック・マー(馬雲)などの本と一緒に平積みされていた。

一方、中国の書店を歩いていて気がつくのは、時事的な内容を扱った流行本がそもそも非常に少ないということだ。売られているのは学問的な内容のハードなものが多く、タレント本などはいっさいない。日中関係を歴史的観点から分析した研究者の本や「日本史」関連本、『菊と刀』など日本文化を紹介する本の翻訳などは見つけることができたが、日本に限らず、特定の国家をおとしめるゴシップ的な内容のものは皆無だった。

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