中国の書店が「親日」であるのにはワケがある 「嫌中本」が売れる日本との決定的な違い

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1階の正面玄関を入ってすぐの「話題の本・ベストセラー本」というコーナーに、冒頭の本がズラリと並べられていたからだ。まさか、と思いつつ手に取ると、装丁などは多少異なっているが、正真正銘、日本の同名本の翻訳だった。ビニールでパックされていて開けられないものもあるが、開けられるものは中国人が熱心に立ち読みしているではないか。うれしくて、思わず「あの、私、日本人。それ、日本の本なんですけど……」と隣で日本本を読みふけっている中国人に声をかけてみたい衝動にかられた。

待ち合わせしていた中国人の友人がやって来たので、彼女に私のびっくり具合を説明すると、あきれた表情で「中島さんったら、今頃、何を言っているの。そんなのずっと以前からですよ。中国人は以前から日本の本が大好きですよ」と教えてくれた。

しかし、多くの日本人にとって、この事実はちょっとした衝撃ではないか。

「反日」の書籍は見当たらない

何しろ中国は反日国家であり、日本の書店では「反中・嫌中本」が山ほど売られているのだから。逆に、あれだけ強硬な態度を取る中国なら、書店で日本以上に「反日本」が売られていてもおかしくない。いや、売られているはずだ……と勝手に想像して、一方的に中国人を毛嫌いしている人もいるかもしれない。

村上春樹本は相変わらず大人気

ところが、それは大いなる誤解である。上海だけでなく、いくつかの大都市にある書店を調べてみたが、中国の書店では、日本で見る本の逆バージョン、いわゆる「反日本・嫌日本」は見当たらない。それどころか、日本でも人気の本があちこちに平積みされていて、人気を博しているのが“普通”なのだ。中国の書店に日本本はつきもの、といっても過言ではない。

特に、村上春樹の本が中国でも人気があることは、日本でもかなり知られている。拙著『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』でも紹介しているが、村上氏の本は1989年以降、中国で130冊以上が翻訳され、中でも『ノルウェイの森』は抜群の人気を誇っている。都会に住むエリート層に人気が高く、現在、中国の出版界で人気のある若手ベストセラー作家にも強い影響を与えているという。東野圭吾も同様で、同書店では、村上氏と東野氏の特設コーナーもあった。

しかし、「愛の伝道師」こと渡辺淳一の『失楽園』や『愛の流刑地』まで置いてあるのには、私もびっくりした。

もちろんきちんとした小説ではあるが、社会主義国の中国で、こういうたぐいの本も売っているの?と思ってしまうほど、日本の小説はかなり幅広い分野にわたって翻訳・出版されている。断っておくが、これらはパクリではなく日本の出版社と契約した中国の出版社から正式に翻訳・発売されている正規本だ。

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