先進国で「出生率低下」嘆く人に知ってほしい視点 大家族を作らないという選択は「利己的」なのか

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2人とも小家族を選択した人々を非難するつもりはなく、子供を持つことができない人々への思いやりも忘れてはいない。だが社会全体としての少子化について語るとき、2人の口からはどうしても「利己的」という言葉が出てくる。現代の都市化した世界で子供をたくさん持つのは、とんでもなく大変だというわけではないと2人は言う。

小さな家族は「利己的」なのか

ときには休日に大家族用のレンタカーを借りるのが大変だったり、イベントのチケットを人数分予約するのに苦労したりするが、そんなことは些細な不都合でしかない。サラとヴィッキーから見れば、小家族を選択した人々は、新しい命を生み出すことよりも自己啓発や休暇、子供1人に1部屋を確保することなどを優先させていることになる。

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その選択について誰かを非難しようというのではないが、そういう選択がなされる社会について、彼女たちは次のように説明している。今わたしたちが生きているこの世界では、個人の目標や一定の生活水準の達成が規範になっているが、その規範は大家族を持つことと折り合いをつけるのが難しいのだと。突き詰めれば、それらの達成を望む場合、そもそも家族を持つのは無理だということになりかねない。

一方サラは、大家族を持つことにした自分のほうが利己的だという可能性もあるのではないかと指摘した。欧米の、とくに大量消費・大量排出が止まらない先進国では、子供を持つことのほうがむしろ身勝手ではないかという疑念が広まりつつある。この問題を提起したのはアメリカの下院議員アレクサンドリア・オカシオ=コルテスだった。

「わたしたちの子供の時代には生きていくのが容易ではなくなるということが、基本的な科学的合意として形成されています。ですから若い人たちが、それでも子供を産んでいいのかと躊躇するのはむしろ当然のことでしょう」

ポール・モーランド 人口学者

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ぽーる もーらんど / Paul Morland

ロンドン大学に所属する気鋭の人口学者。オックスフォード大学で、哲学・政治・経済の学士号を、国際関係論の修士号を取得。ロンドン大学で博士号取得。ドイツ、英国の市民権を有しフランス語も堪能なマルチカルチュラルなバックグラウンドを持つ。

 

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