松丸さんは、「警察は震災の人命救助が優先するので、そうした犯罪への対処がどうしても遅れ、犯罪自体を把握するのが遅くなる傾向にある」と指摘する。
「被災地犯罪では、警察が把握するまでにかなりの時間を要しますが、やはり件数が一番多いのが『窃盗』です。無人の家屋、コンビニ、店舗などに侵入して金品を盗む。ATMを破壊して現金を盗み出す。それと乗り捨てられた車の部品やガソリンを盗む輩もいます」
松丸さんによると、犯人たちは県外ナンバーの車などで堂々と乗りつけ、現地の人やボランティアを装い、家屋などを物色するという。
時間が経って起こる避難所での犯罪
また、発災から時間が経つにつれて、避難所での犯罪、具体的には窃盗や性犯罪などが増えてくる。
ウィメンズネット・こうべが運営する「災害と女性」情報ネットワークのホームページによれば、1995年の阪神・淡路大震災時には、以下のような女性たちの悲痛な声が多く寄せられた。
・プライバシーが守られなかった。長期にわたるプライバシーのない生活は人権侵害である。特に思春期の女性たちにはトラウマになった人も少なくない
・風呂にのぞき穴がたくさんあった
・子どもたちが避難所や仮設住宅でさまざまな性的な被害を受けた
・避難所の校庭の隅で遊ぶ幼児への性的虐待があった
・避難所で女性が性的被害にあったが、加害者も被災者だからと言う声もあった
東日本大震災女性支援ネットワーク(現:減災と男女共同参画 研修推進センター)が、2011年の震災後に行ったアンケート調査では、避難所などでの女性たちの犯罪被害を目撃した人や、相談を受けた人たちから寄せられた事例は82件。このうち、夫や交際相手による暴力(DV)が45件、それ以外の暴力(主に性被害)は37件だったという。
被害者は5歳未満から60代以上までと幅広い年代で、幼い男の子も含まれていたという。
同ネットワークが実際に聞き取りしたケースでは、ある女性からの被害報告として「娘と身を寄せていた避難所のリーダー格から、娘に危害がおよぶと脅され、被害に遭った」との訴えがあったという。
女性や子どもに対して、「複数で行動するように」というメッセージが出されてはいるが、個人で自分の身を守るには限界があることも事実だ。こうした悩みを解決するには、犯罪が起こりにくい環境づくりを徹底することが何より重要となる。
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