肥満症治療薬「ウゴービ」保険適用される人の条件 週に1回「使い捨て注射器」を自分でお腹に刺す

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適応外使用というと、悪い事のように聞こえるかもしれないが、それは誤解だ。どの薬剤を治療に用いるかは薬効に基づいて医師の裁量に任されている。医学や医療の進歩に、薬剤の承認という行政手続きは必ず遅れるからだ。ただし、健康保険が支払いを認めるか否かはケースバイケースだ。適応外使用であっても、海外で多くの使用実績があり、論文などで効果が報告され、標準的な治療薬として認められているような薬剤は、適応外使用でも健康保険での支払いが受けられる場合がある。

本来は2型糖尿病の治療薬であるオゼンピックやリベルサスを肥満症の治療に用いる場合、適応外使用となる。私は自費で治療を提供してきたし、多くの医師もそうしているはずだ。今後、ウゴービの登場によって、正々堂々と肥満症の治療にセマグルチドを使って、保険請求できるようになる。経済的理由により肥満の治療に手の届かなかった人々にとって福音だ。

ウゴービを使えるのはどんな人?

日本で発売されるウゴービの添付文書によると、ウゴービの適応となるのは以下の条件を満たす人だ。

肥満症で、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。

・BMIが35kg/㎡以上
・BMIが27kg/㎡以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
肥満に関連する健康障害:耐糖能障害 (2型糖尿病・耐糖能異常など)、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞・一過性脳虚血発作、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、月経異常・女性不妊、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)・肥満低換気症候群、運動器疾患 (変形性関節症:膝・股関節・手指関節、変形性脊椎症)、肥満関連腎臓病

アメリカの成人におけるウゴービの適応症は、

・BMIが30kg/㎡以上
・BMIが27kg/㎡以上で、少なくとも1つの体重に関連した併存疾患(高血圧、2型糖尿病、脂質異常症など)を有する

EUでのウゴービの適応症は、

・BMIが30kg/㎡以上
・BMIが27kg/㎡以上30kg/㎡未満で、少なくとも1つの体重関連合併症がある。
体重関連合併症の例:血糖異常(糖尿病前症または2型糖尿病)、高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群または心血管疾患

例えば身長160センチの人だと、アメリカでは体重が76.8kg以上という条件だけ満たせば治療が受けられる。EUでも血糖値が高め、というだけで条件を満たす。対して日本では、高血圧か脂質異常症か2型糖尿病のいずれかの病気で、その他に例えば閉塞性睡眠時無呼吸症候群と非アルコール性脂肪性肝疾患を合併してないとウゴービ治療を受けることができない。

日本では、欧米に比べて、ウゴービで治療を受けるためのハードルがかなり高いことがご理解いただけよう。これはどのような科学的根拠によるのだろうか?

次ページ日本こそウゴービの適応基準を下げるべき
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