勘違いから一転、新種新属の恐竜を発見するまで ウズベキスタンまで駆けつけて得られた成果

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これまでの分析で、ウズベキスタンで観察した上顎骨はカルカロドントサウルス類という肉食恐竜のグループに属する可能性が考えられた。系統解析という、骨の特徴をコンピュータ上で解析し、恐竜どうしの系統関係を構築する方法で調べた結果だ。

カルカロドントサウルス類には大型種がたくさん含まれていて、全長10メートルを超えるカルカロドントサウルスやギガノトサウルスなどが有名だ。白亜紀後期の前半までは、カルカロドントサウルス類は北半球と南半球の両方に生息していたことが知られている。

ティラノサウルスのなかま(ティラノサウルス類)が勢力を拡大する前は、カルカロドントサウルス類が世界進出を果たしており、陸上の支配者だったのだ。

特に南半球ではおそらくティラノサウルス類が不在だったので、頂点に立つ捕食者として巨大種がたくさん出現している。中にはティラノサウルスのように前あしが矮小化した種(メラクセス)もいて、収斂進化したことが分かっている。

どういうわけかその後、カルカロドントサウルス類は忽然と地球上から姿が消えてしまう。北半球では完全に絶滅してしまう。その背景には、ティラノサウルス類の台頭があっただろうと私はみている。

上顎骨の長さから全長を推定

早速、収蔵庫の整然と並んだ白いキャビネットを開けて、カルカロドントサウルス類に近縁な肉食恐竜の頭骨レプリカ標本を取り出してもらった。ノギスやメジャーを使って、上顎骨の長さや頭骨全体の長さを測っていく。

ウズベキスタンの部分的な骨とは異なり、国立科学博物館の標本は完全な頭骨だったので、その大きさにとても驚いた。骨1個だけだとその恐竜の大きさを想像するのはとても難しい。でも、完全な頭骨であればその大きさは一目瞭然。

例えばヤンチュアノサウルスは上顎骨だけで47センチあり、頭骨全体では80センチ近くもあった。ちょっとしたちゃぶ台くらいある。なかなかの威圧感だ。

国立科学博物館で調査した恐竜は全身骨格が見つかっていたので、その論文に当たれば全長が記載されている。つまり、1種につき上顎骨の長さと全長データの両方を入手できる。

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