ん? いろいろあったが、このままでは会社は毎月1000万円ぐらい経費がかかるから、あと半年もしないうちに潰れるし、現行の製品は売れていない。
達成もクソもない状態だったので、なにも書けずにいたのだが、それを察したのか、ハワードは補足した。「どうしても見つからなければ『電灯がついている』ことでもかまわないので、それを書いてください」。
まわりの連中を見てると、なにやら手元にカリカリ書いている。僕もなにか書かなければ……。
「いままでに何が達成されたか……」。僕は書いた。
・150万ドルの資金を得た
・ベースとなる最初のアイデアは市場で高い評価を得た
・カギとなるメンバーが集まってる
いまだったらジョークで「電灯がついている」と付け加えるところだが、当時はそんな精神的余裕はなかった。
全員が手元に書き終わると、ハワードは順番に1つずつ読ませた。1つ読んでは次の人、といった具合なので、3〜4周まわることになる。自分の番がきて、もうすべて自分の書いたものは読んでしまった人は、「パス」していい。
この方法だと、1人の意見で全体の雰囲気が動くのではなく、みんなの意見が平均的に出てくるので、悪くない。それにもまして、「けっこうイケてるじゃん!」というのがたくさん出てくるので、雰囲気もよくなる。
これによって僕らは、
・経営の中心となるメンバーが緊張感を持ってそろった
・人の意見を気にすることなく、それを発表するしくみを手に入れた
・参加させられているという感じから、「なにかやってやろう」という気分
・前向きな雰囲気にする
を手に入れた。
「雰囲気をよくする」手法を得た
チームの運営や会議では、雰囲気がよいチームは成果を出しやすいし、そうでないところは難しい。
それは誰でもわかることなのだが、うまくいっていることを発表し合うという手法を使えば、「雰囲気をよくする」ことができるという手順を得たのも大きかった。
ここで、10分ほどバイオブレーク(生態休憩=トイレ休憩)をすることにした。ハワードは時計を指して「あの時計で11時30分に集合」と言った。
トイレに行ってから、いまだ微妙な緊張感とともに(別に残尿感というわけではないですが)会議室に戻った。