「奨学金437万円」男性が40代でようやく得た天職 貧困家庭出身の彼が今、アフリカで働く理由

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長内真人さん(仮名・57歳)は、生活能力がない父親の元で生まれ育ち、苦労の絶えない日常を送ってきた(写真はイメージです)(写真:jessie/PIXTA)
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これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

「うちは父親が縫製業を経営していましたが、プライドが高く、アルコール依存症で、人間関係がうまく築けないなど……。性格的な問題がいくつもあり、僕たちきょうだい3人はいつも生活に困っていました」

生活能力がない父親の元で生まれ育ち…

そう語るのは長内真人さん(仮名・57歳)。関西出身で、生活能力がない父親の元で生まれ育ったため、苦労の絶えない日常を送っていたという。同氏は続ける。

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「70年代はまだ国全体が貧しかったため、『ほかの家庭もこんな生活なのかな?』と思っていたのですが、周りの暮らしぶりは良くなっていくのに、うちは一向に貧しいまま。年に数回、電気代の支払い遅延のため、電話を切られることがあったので、小中学生ぐらいまで町会長など、近所の有力者の家に母親と一緒に行くこともありました。

当時は何のために行っているのかわからなかったのですが、高校生くらいになってからようやく『あのとき、母は金を借りていたんだな』ということを理解しました」

5人家族だが、父親の事業はうまくいっていないため、長内家の世帯年収は180万円。「それでも、田舎だったのでなんとか暮らしていけた」とのことだが、長内さんは高校時代から奨学金を借りることになった。

次ページ自分は平気でも「家族がお金を借りる」ことは嫌がった父
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