財務省にあって厚労省にない診療報酬改定の一言 診療所の利益に切り込む次なる焦点「処方箋」

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管理料とは、注射や手術や投薬などの医療技術の提供とは別に、患者に対する療養上の指導や医学的な管理を行った際に算定される診療報酬項目である。「効率化・適正化」によって、診療報酬改定率として0.25%引き下げるというわけだから、診療所も病院もこの単価が上がるということはあり得ない。

診療所での単価を下げる方向で議論を進めなければ、整合性がとれない。病院の単価を上げようものなら、診療所の単価はもっと下げなければならないのだが、そこをどうバランスをとっていくかが問われよう。

処方箋料は、医師が患者に医薬品を処方した際に発生する。これには、前回2022年度の診療報酬改定で導入された「リフィル処方箋」とも関係してくる。

2年前の焦点「リフィル処方箋」を再度俎上に

リフィル処方箋とは、症状が安定している患者について、医療機関に行かずとも、一定期間内に反復利用できる処方箋である。2022年度診療報酬改定で導入され、その分だけ診療報酬を下げる代わりに、他の診療報酬単価を上げるという決着をみた(東洋経済オンラインの拙稿「2022年度診療報酬改定で今後の医療はどうなる?」)。

ところが、この2年間、リフィル処方箋の利用が極めて低調だった。財務省はこれを問題視していた。リフィル処方箋の利用が進まないのは、一因として、それにより医療機関が処方箋料を稼げなくなることがある。

今般の診療報酬改定の記者発表文書では、リフィル処方箋には一言も触れていないが、リフィル処方箋のさらなる利用を促すことを通じて、「効率化・適正化」を実現することが考えられる。しかもそれが、名ばかりではだめで、実効性のある形で処方箋料を再編してゆかなければならない。

「効率化・適正化」によって診療報酬を0.25%引き下げることは、国民が負担する医療保険料負担を増やさないようにするために、極めて大事なものである。しっかりと実績を上げてもらわなければならない。

魂は細部に宿るという。今般の診療報酬単価の改定が、わが国の医療をよりよくすることにつながることを期待したい。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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