誤解だらけだった戦略コンサルティング 『コンサルティングとは何か』を書いた堀紘一氏に聞く
失敗をなじるような文化は最悪といっていい。失敗をなじるのはマスコミと政治の仕事で、ビジネスは失敗を恐れない人々が手掛けるもの。ビジネスパーソンは時代の開拓者であり、政治家やマスコミはいわば時代の後をついていく人たちだ。先頭を歩く人は非難を気にしても始まらない。
私も失敗をたくさんしてきたし、ホンダも、かつてはソニーもたくさんしてきた。強いていえば、ソニーは失敗をしなくなったから儲からなくなった。失敗をしないということは、それだけ新しいチャレンジをしなくなったということだ。
──コンサルティング料の根拠も明らかにしています。
もっと生々しく書いてもよかった。たとえばトヨタ自動車からは年3億円いただいている。だがそう書くと、トヨタの株主総会で、3億円もコンサルティング料を払っているのか、と社長が質問を受けてしまうかもしれない。世間を騒がせてはいけないので触れなかった。
通常、月に2000万円から3000万円のコンサルティング料をいただく。その算出式は極めてシンプルで、コンサルタント1人の年間労働時間2080時間(1日8時間×週5日×52週)をベースに、時間単価、所要時間・人数、マルチプライヤー(乗数)を掛けてはじき出す。
──コンサルティング会社にはシンクタンク系や金融系もあります。
シンクタンク系や金融系はまったく違う業種だと思っている。あそこはサラリーマン集団。サラリーマンには100年経ってもできないことがたくさんある。われわれは生きるか死ぬかを懸けている。たとえば、わが社は、7人採用して3年後には3人、7年後には1人しか残っていない。野村総合研究所でも三菱総合研究所でも7人採ったら7年後に5人や6人は残っている。また、あなたは能力がないから辞めてほしいとも言われまい。場合によっては能力の低いほうが定年までいたりする。