はやみねかおるが「意地でも伝え続けたい」こと 作家の原点は生徒からの「おもしろくない」
――はやみねさんが考える「大人」とはどういう存在ですか?
僕は、次の世代の子どもたちのことを考えて動いている人が大人だと思います。年齢の問題じゃないんです。子どもたちの未来を考えていない人は、たとえ60歳でも大人ではないと僕は思います。
「大人」とは
そして僕は、子どもたちに何を伝えられるかを考えたときに、「人生は楽しい」ということ。そのことを、もう意地でも伝え続けたいんです。僕はどんなにつらくても、つまらなかったとしても、「今が一番楽しい」と答えるようにしています。子どもたちにも「今が一番楽しい」と言えるような人生をすごしてほしいと思っています。とにかく今が楽しい、そしたら明日はもっと楽しいかもしれない。明後日はもっともっと楽しいかもしれない。未来はさらに楽しい。そう考えるとワクワクしない? と伝えたいです。
そして「今」を楽しく生きるためには、「知恵」が必要だと思うんです。今の学生さんはすごく勉強熱心ですよね。みんな知識はあると思うけれど、それだけでは「知恵」にならないのだと思います。知識と知識をかけ合わせて「知恵」が生まれるんです。
柄の折れたスコップを直してください、と言われたらどうしますか? 新しい柄は手元にある。でもまず、折れた柄をシャベルの部分から取り外さないといけない。
私なりの答えは、スコップを燃やす、ということです。折れた柄は木だから燃える。だけどシャベルの部分は鉄だから燃えない。燃え残った鉄と新しい柄をくっつけて、見事にスコップを直すことができます。
木は燃える、鉄は燃えない。これは「知識」です。そして知識と知識を合わせてスコップを再生させること、これが「知恵」なんです。人生を楽しむ知恵を持っている人はどのくらいいるでしょうか。知恵をつくり出す訓練を学校でもできたら、もっとおもしろくなるのではないかと思います。
それから、今の世のなかは便利すぎるので、もっと子どもたちは困ったほうがいいですね。困らないと頭を使わずに済んでしまいますから。
――不登校なんてまさに困った状況だらけです。
そこで「困ってもうダメだ」とあきらめるのではなくて、前を見て、「やっぱり人生は楽しいんだから絶対なんとかなる」と思ってほしいです。解決方法はいっぱいあって、自分に向いているものも向いていないものもあるはずです。そこで、自分に合うのはどれだろうと選べる知恵もあったらいいですね。もしも見えている世界が狭かったら、たくさんある選択肢にも気づけないかもしれません。だから世界を広く見ていくためにも知恵と経験は大事です。「知恵があると人生はもっと楽しくなると知ってほしい」と思いながら、僕は物語を書いています。だって、困った状態が、自分の知恵によって解決したら、もう最高に楽しいじゃないですか。
――ありがとうございました。(聞き手・不登校ラボ、編集・高山かおり、茂手木りょうが)
1964年、三重県生まれ。三重大学教育学部を卒業後、小学校の教師となる。子どもたちを夢中にさせる本を探すうちに、みずから書きはじめる。『怪盗クイーン』『都会のトム&ソーヤ』(すべて講談社)など多数の作品がある。第61回野間児童文芸賞特別賞受賞。
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