藤田嗣治が描いたアッツ島玉砕の戦争画

極北の岩ばかりの小島で起きたこと

書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

藤田嗣治の『アッツ島玉砕』を超える戦争画はない。日米兵士がひしめき合い死闘を演じている暗い茶色の凄せい惨さんな大画面からは戦意高揚というよりは厭戦(えんせん)の気配さえ漂うが、国民的人気を博して軍部は大満足した。だが戦後、藤田は一転して戦争協力者として非難を浴びる。作品の誕生、巡回展示での反響、山田風太郎や新藤兼人の反応、昭和天皇のかかわり、藤田の奇怪な行動など、興味深い事実が子細に紹介される。そのうえで、兵士二千余人が全滅へと追い込まれた極北の岩ばかりの小島が何ら戦略的意味を持たなかった不可思議の解明へと話は進む。

藤田の絵がそのこととどうかかわっていたか。彼の本音はどこにあったのか。フランスへ戻った藤田は「日本を捨てたのではない、捨てられたのだ」と夫人に語ったという。「玉砕」の内実を多彩な切り口からえぐり出していく秀作ドキュメントであり、「アッツの花」のエピソードが強い余韻をもって迫ってくる。(純)

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • コロナショック、企業の針路
  • 赤木智弘のゲーム一刀両断
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • コロナ後を生き抜く
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
スペシャルインタビュー<br>元ラグビー日本代表・畠山健介

今年から米メジャーリーグ・ラグビーのチームに所属、華やかな選手生活とは裏腹に幾多の葛藤を乗り越えてきた畠山選手。「ラグビーファンの拡大には、リーグのプロ化が不可欠だ」。新天地にいる今だから見えてきた日本ラグビー改革論を熱く語ります。