隣の福井県で、震度5強の揺れに見舞われたあわら市には、ジェネリック最大手・サワイグループホールディングスの子会社、トラストファーマテックがある。2023年に本格稼働したばかりで、高尿酸血症治療薬など2品目を製造している。
同社の建物では壁のひび割れや物品の落下が確認され、詳細な被害を調査中だ。工場の機械は1月4日に稼働予定だったが、点検を行うため、来週以降の稼働を見込む。従業員については全員の無事を確認できている。
最も甚大な被害が発生した石川県の状況はどうか。眼科用医薬品首位の参天製薬は、石川県羽咋郡宝達志水町に能登工場を構える。世界最大級の点眼薬製造数を誇る、参天製薬の中核拠点だ。この能登工場では、同社が年間で生産する点眼薬約4億本のうち、約3億本を製造している。
能登工場では津波や火災の被害はないものの、一部建物や設備への被害が確認された。震災発生当日に危機管理委員会を立ち上げ、安全性が確認でき次第、工場再開のメドを判断していく方針だ。製品在庫は一定数を確保しているため、当面の供給には影響は出ない見込みという。勤務地や居住地が被災地域にある社員については、1月2日時点で全員の安全を確認している。
BCP対策で本社の一部を能登に移したが…
最大震度6強を観測した石川県珠洲市に、一部本社機能を置く医薬品関連企業もある。傘下企業群で医薬品の製造販売や開発・製造受託などを多角的に展開するアステナホールディングスだ。
創業の地である東京・日本橋に本社を構える同社は2021年6月、持ち株会社体制への移行と併せて、本社機能の一部を珠洲市に移転した。コロナ禍で都市部一極集中のリスクが顕在化したことなどを踏まえ、グループ全体のBCP対策と、従業員の働き方の多様化などを目的とした判断だった。
全社員が自ら居住地と就労地を選択できる環境構築を目指し、岩城慶太郎社長自身も珠洲市に移住。地元自治体との協業により、新規事業の創出にもつなげる方針を掲げていた。
アステナHDが1月2日に出したリリースによると、珠洲市の拠点で働く従業員(2022年11月末時点では5人)と家族の安全は確認しているという。一方で同社管理物件の建屋の状態を確認することは困難な状況にあり、「適宜状況把握に努めていく」としている。
メディパルホールディングスなど医薬品の流通を担う医薬品卸大手4社によれば、北陸地方の各拠点に大きな影響はないが、道路の通行止めや渋滞などにより、通常よりも配送に時間がかかっている。
道路の寸断や余震などにより復旧作業に支障が出ていることから、被害の詳細が明らかになるのはこれからだろう。厳格な管理体制の下での製造・配送が求められる医薬品なだけに、予断を許さない状況が続きそうだ。
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