AKB総選挙、勝者を支えた驚異のプレゼン技術 なぜ彼女たちのスピーチは共感を呼ぶのか

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その3つの黄金則とは

① Confession (告白)
② Conflict (葛藤)
③ Connection  (共感・つながり) 

である。

「ブス」「ハゲ」を告白してしまうアイドル

まずはConfession(告白)だ。

「そんな私でも、大分県で学生をしているときは、自分のことをまあかわいいと勘違いしていました」「私はブスで、貧乳で、いいところは本当に少ないです」(指原さん)

「ずっとハゲてて。去年までずっと粉をふりかけていたんですけど、やっと治りました」(松村香織さん)

「私は、みんなから、沢山の人から好かれるタイプじゃない、世間の人からも態度が悪いとか、悪く思われることも多い」(島崎遥香さん)

以前ご紹介した、「人は『挫折、貧乏、失敗』の告白に共感する」の中でも触れたように、人はとりつくろわない、本音の告白にどうしようもなく魅かれるものだ。自分を強く見せよう、いい部分だけを見せようとする人に対しては、警戒感を抱いてしまうが、多少かっこ悪くても、弱い部分や素の自分をさらけ出す、そんな「本音」には思わず心を開いてしまう。

筆者の時代のアイドルといえば、松田聖子さんや中森明菜さん、小泉今日子さんなどだが、彼女たちは常に神秘のベールに包まれ、トイレにも行かないようなオーラを醸しており、まさに、雲の上の存在だった。

対して、AKBは、自分たちを「ブス」や「ハゲ」などという言葉で自分を形容することもいとわない。そもそもが「会いに行けるアイドル」というポジショニングの存在なわけだが、ぶっちゃけの告白は等身大の彼女たちの「表も裏も」見せてしまうことで、ファンとの距離を限りなく縮める仕掛けともいえるだろう。

2つ目の黄金則は、Conflict(葛藤)である。

「一期生として入って、たくさんのメンバーの卒業を見送ってきました。いろんな葛藤やいろんな思いがありました。私は入って一年ぐらいの時に、あることに気づきました。私はこのグループでは一番になれない、ということです。同期には前田敦子がいました。次の期には大島優子がいました」(高橋さん)

「芸能界に入って、AKBに入って、なかなかセンターになれない私は、どうやったらセンターになれるんだろうとずっと考えていました。どうやったら前田敦子さんや大島優子さんのようになれるのか、考えたけど、なれませんでした。私は開き直りました」(指原さん)

AKBのメンバーのトークを聞いていると、「才能のあるストーリーテラーだな」と感じることが多い。それは、彼女たちが「葛藤」を乗り越え、「勝利」を手に入れるまさにヒロイン役として語り、演じ切っているからだ。

シンデレラでも赤ずきんでも、どんなディズニーのお話やハリウッド映画にも登場するもの。それはキャラクターと、キャラクターが直面する葛藤である。葛藤には2種類ある。キャラクターの心の中の葛藤、そして、キャラクターがほかのキャラクターや社会や運命など、自分の外にあるものと戦う葛藤だ。

上記のスピーチには、そうした心の相克が、教科書のように鮮明に描かれている。自分の中の心のざわめき、他のメンバーとの確執、対抗意識、競争。そうしたものを乗り越えて、勝利を手に入れ、堂々と凱歌を上げるのだ。

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