専門家が懸念する「後払いローン」急膨張のツケ アメリカ経済を脅かしかねない「隠れ債務」
後払いローン会社は、後払いローンはクレジットカードやペイデイローン(次回の給料での返済を前提とする高金利の短期小額融資)よりも借り手にとって良い商品だと言う。ローン期間を短くすることで借り手の返済能力をより正確に評価できるという立場だ。
それでも、すべての消費者が後払いオプションを注意深く利用するわけではない。消費者金融保護局が2023年に発表したリポートによると、過去12カ月間に銀行口座の残高がマイナスとなる事態(引き落とし額が足りなくなり、自動的に銀行に借金する事態)を経験した人の割合は、後払いローンを利用していない人々では17%だったのに対し、後払いローン利用者では43%近くに上った。
「こうした人々は、まさにほかよりも脆弱な層だ」とスタンフォード大学の研究者エド・デハーンは言う。
デハーンがほかの研究者3人と2022年に発表した論文によると、後払いローンの初回利用開始から1カ月以内に、引き落とし額が銀行残高を上回り、クレジットカードの延滞料金が発生し始める傾向が強まることが明らかになった。
低所得者が頼る実態
アメリカで低所得者層を支援しているファイナンシャル・アドバイザーによれば、後払いローンを利用する相談者が増えているという。
非営利団体ハートランド・アライアンスに勤めるシカゴのファイナンシャル・カウンセラー、バーバラ・L・マルティネスは、相談に訪れる人の多くは、後払いローンで足りない分をキャッシングで補っていると話す。給料日が来ても、さまざまな支払いに充てるのに十分なお金がないため、仕方なく後払いローンに頼ることになる。
「後払いローンそのものが悪いというわけではない。ただ、本当にあっという間に手に負えなくなる場合があり、そうなると防げたはずの大きな損失が生じる可能性がある」とマルティネスは言う。