専門家が懸念する「後払いローン」急膨張のツケ アメリカ経済を脅かしかねない「隠れ債務」
後払い市場の規模に関する推計には大きな幅がある。クインランは、後払いオプションを通じた2023年の支出は約460億ドルだったと考えている。これは、2022年にアメリカ人がクレジットカードで支払った3兆ドル超に比べれば小さい。
とはいえ、クラーナ、アファーム、アフターペイ、ペイパルといった会社が提供しているこの種のローンの利用は、アメリカの家計の一部に逼迫の兆しが見られる中で急激に増えている。
ニューヨーク連邦準備銀行によると、後払いローンを最も多く利用しているのは20代と30代で、ほかの世代を大きく引き離している。これは、若者がクレジットカードを限度額まで使い切ってしまい後払いローンに頼っているという金銭的問題の表れであるのと同時に、それ自体が若者に過度の消費を促すことで問題の原因になっている可能性も示している。
新型コロナ禍のネット通販で利用が急増
シカゴに住む23歳の大学生で、ホーム・デポでアルバイトをしているリズ・シスネロスは、後払いローンの手軽さに驚いたと話す。パンデミックの最中に、彼女はTikTokでインフルエンサーたちがこのローンをすすめるのを目にし、友人の1人からこのローンを利用してデザイナーズシューズを買ったという話を聞いた。
シスネロスは洋服や靴、セフォラのコスメを買うのにローンを使い始めた。一度に複数のローンを利用することも多かった。食料品店のレジで払うお金が足りなくなって、使いすぎに気がついた。その日の朝、後払いローンの会社が銀行口座から引き落としを行っていた。彼女は支払いのスケジュールを把握できなくなっていた。
後払いローンがアメリカで利用できるようになったのは数年前だが、普及が一気に進んだのはオンラインショッピングが急増したパンデミック期だ。
オンラインショッピングの利用者は、支払いのページや後払いローン会社のアプリで後払いを選択することができる。後払いローンが使える実店舗もある。例えばアファームは先日、ウォルマートのセルフレジで後払いローンのサービス提供を開始したと発表している。