日本企業が抜け出せなくなった貧乏"症"の正体 いつのまにか儲からない事業が氾濫している訳
ではどうすればいいのか? 根本は、「困りごと」を徹底的に理解することである。少数でもいいので、本当に困っている人を特定して、「お金を払ってでも解決したい」という課題に絞って、商品やサービスを設計するのである。
例えば、共働きの夫婦にとって夏休みに子供が学校に行かないということは、実は大きな「困りごと」である。小学校の高学年くらいであれば、自分で遊びにも行けて、塾や習い事にも行けるが、低学年ではそうはいかない。学童保育サービスも夏休みには対応してくれないところもある。
そうした子供を数日預かって「サマーキャンプ」に連れて行ってくれるサービスなどは、そうした「困りごと」の解決策となりうる。もちろん、その料金(必ずしも安くない)を払える親でないと利用できないのだが、高収入の両親であれば(社内で要職についている可能性も高いので自分たちはあまり休めないこともあり)、リピート顧客になってもらえるかもしれない。
「儲からない」ビジネスになる要素
「困りごと」を特定するうえでは、既存の代替サービスが存在しないことを確認することも重要だ。サマーキャンプは、子供の自立を促すという意味でも代替があまりないサービスであり、夏休みの子供を数日預かるという意味でも競合のあまりないサービスである。
ここで、もっと多くの顧客を獲得しようとして、値段を下げたり、日数を短くしたり、体験内容を薄めてしまうと、客数は増えるかもしれないが、単価が下がってしまい、子供や親の満足度も下がってしまうために、リピートが見込めなくなり、儲からなくなってしまう。中身の薄いキャンプになると、習字やピアノなどとの差があまりなくなってしまい、代替の対象が広がる可能性が高くなる。
また、実際に顧客向けにサービスを開始してから中身を修正していくというスタイルをとることも、場合によっては可能であり、有効である。しかし、日本のメーカーの多くは、完璧な品質の製品を作るまでは市場に投入しないという志向が強い(試作の段階で顧客に提供してフィードバックをもらって改善するという前例が自社内にない)ので、どうしても出遅れてしまう。
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