トヨタが路線修正に布石、国内生産の死守も限界
一難去ってまた一難。東日本大震災による減産から立ち直りつつある自動車業界を円高が襲った。一時的に1ドルが80円を超えた局面で注目を集めるのが、トヨタ自動車経営陣の言動だ。
6月10日、トヨタは震災の影響で見送っていた2012年3月期の業績予想を公表。その場で財務担当の小澤哲副社長は、「トヨタのものづくりは日本だけのものではないと言われると、返事がしづらい」と豊田章男社長がこぼしている、と披露した。
この話には前段がある。1カ月前の決算発表時に豊田社長は「あくまで日本での生産にこだわりたい」とコメント。同席した小澤副社長は「現在の円高の下では、日本での生産を続けることに限界を感じる」と異論を呈した。
要は、お互いの役割を分担したうえで、国内生産の縮小をにおわせているわけだ。その背後には、「国内生産300万台体制を死守する」という、トヨタの方針が揺らいでいる事情がある。
10日に発表されたトヨタの12年3月期計画では、通期の営業利益は前期比36%減の3000億円。6月までの減産で4~9月期は1200億円の営業赤字となる。電力供給不安が解消し、挽回生産が本格化する10~3月期には4200億円の営業黒字に転じる見通しだ。
今期の為替は1ドル=82円で想定しており、円高による利益の目減りは1000億円を見込む。だが、円高の継続がトヨタの経営に与える影響は見掛け以上のものがある。
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