中国の太陽光発電業界、陰る「投資ブーム」の裏側 資金調達のハードル上がり、IPOの断念相次ぐ

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相次ぐIPO中止の裏には、中国証券監督管理委員会(訳注:日本の金融庁の証券監督部門に相当)が8月27日に出した通達の影響がある。

この通達のなかで同委員会は、「市場の状況に応じてIPOのペースを段階的に落とし、資金調達の必要性やタイミングを見極める。上場企業の資金調達に対しては、本業への投資を目的にすることを強く求め、多角化への投資は厳しく制限する」という方針を示した。

「資本市場では、本業以外が目的の資金調達はすでに難しくなっている。(本業向けの)新規の資金需要に対する投融資にも調整が入り、投資家のマインドは冷え込んでいる」。太陽光パネル大手、天合光能(トリナ・ソーラー)の董事長(会長に相当)を務める高紀凡氏は、前出のCPIAの年次フォーラムでそう述べた。

太陽光パネルは原価割れ

CPIAのまとめによれば、太陽光関連企業がIPO、第三者割当増資、転換社債発行などの手段により資本市場から調達した資金は、2022年は総額1661億8700万元(約3兆3190億円)に上った。これは3年前の2019年の4倍以上にあたる。

太陽光パネルの生産過剰で、メーカーの販売価格は原価割れに陥っている。写真は甘粛省の山間部に建設された太陽光発電所(太陽光パネル大手の隆基緑能科技のウェブサイトより)

しかし、投資ブームは太陽光発電業界の生産能力過剰と過当競争に拍車をかける結果になった。太陽光発電モジュールの市場価格は、直近では定格出力1W(ワット)当たり1元(約20円)を切っており、メーカーにとっては原価割れの水準だ。

本記事は「財新」の提供記事です

「投資家側のモチベーションは利益への期待にある。太陽光発電業界の利益創出が困難になるなか、投資が減少するのは自然な成り行きだ」

国金証券の新エネルギー・電力設備担当チーフアナリストを務める姚遥氏はフォーラムでそう発言し、投資マインドの冷え込みは金融当局の政策調整だけが原因ではないとの見方を示した。

(財新記者:趙煊)
※原文の配信は2023年12月16日

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