元吉本社員が激白「M-1第1回は無理ゲー」だった訳 お笑い好きの生命科学者が読む「M-1誕生秘話」

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「今まであったようなもんやない、漫才のガチンコ勝負や。K-1のようなガチンコの大会にするんや」
「漫才やからM-1ですね」
「そうや、M-1や」

紳助と谷のこんな会話から、漫才復活プロジェクトはM-1プロジェクトへと姿を変えた。

研究にも引導を渡せるシステムが欲しい

余談になるが、この時に紳助の言ったことが面白い。すこし長いけれど引用したい。

「これはな、実はあかん漫才師に引導を渡してやる大会でもあるんや。漫才を何年もやってるのに芽の出えへんやつは、それがそいつらのためや。でないといつまでもやってるやろ。<中略>そういうやつにできるだけ早く引導を渡してやるのがこのイベントや。辛いけど本人のためや」

定年で引退したが、長い間研究に携わる教授をしていた。生命科学研究でも、そんな若手に引導を渡せるシステムがあればとつくづく思う。

・出場者は年齢、性別、国籍、事務所、プロアマ問わず、コンビ結成10年以内であれば誰でも参加OK
・優勝者には賞金1000万円、準優勝以下は一切なにもなし
・人気、実績、肩書など関係なし、その日の出来だけで審査する
・漫才とは、ふたり同時に出てきて、同時に帰るものとする。道具以外は認めない

これだけがルール、橋本とたった2人で決めたルールだ。ここからプロジェクトが一気に進んだ。というのなら、話は面白くならない。それとは真逆で、いきなりの行き詰まりを見せる。

まずはスポンサー探しだ。こういったストーリーには素晴らしいエピソードがつきものだが、最終的にスポンサーとなったカー用品メーカー・オートバックスの住野社長との面談のシーンがすごくいい。

気を遣ってネクタイをして行ったのに、いきなり「ぼくはネクタイを締めてる人間を信用してないんですわ」と言われてしまう。不安がよぎる中「大阪では漫才ブームが来ますか」と尋ねられた。そこで谷は一世一代のジョークをかます。「もう大阪には来てます。吉本の近くの千日前まで来ています」、「千日前のビックカメラの前まで来ています」、と。

なんやねん、それは……。しかし、それを聞いた社長は爆笑し、「じゃぁ、東京に来るのももうすぐですね」と快諾してくれた。それも、「そうですか、漫才ブームは千日前まで来てますか」と何度もうなずきながら。まぁ、ウソも方便、結果オーライだから許されるだろう。

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