2024年前半は世界的株安と円高がやってきそうだ アメリカの株価は景気後退を反映した調整へ

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ところが、筆者が11月に訪米した際、「さまざまな業界の集まりで、『余剰人員を抱えたまま高い労働コストを負担するのは、そろそろ限界だ』との愚痴が多く聞こえるようになった」との話があった。このため、どこかの企業が耐えきれず、雇用削減を進める動きを始めると、この流れが一気に広がるのではないか。

2024年前半は「株安」「日本以外の金利低下」「円高」へ

このため、すでに悪化の様相を示している中国や欧州の経済に加え、2024年はアメリカの景気も悪くなるだろう。

今の同国の株式市場は「景気悪化→金利低下→株高」と都合がよい解釈に溺れており、そうした浮かれすぎは同国では「rate cut euphoria」(利下げ観測の多幸感)と皮肉られている。だが、景気悪化の様相が深刻化することで、金利低下期待は景気悪化懸念へと、どこかで一気に変化しそうだ。世界的な株安が予想される。

欧米など主要国の長期金利は、景気の先行き悪化を反映して、もう一段低下しそうだ。そうした諸国の政策金利は2024年に利下げが見込まれている。

一方、日本はどうか。日本銀行は異次元の緩和の「正常化」を慎重に進めそうだ。このため、為替市場では円高が進み、日本株についてはそれが輸出株の重しとなるだろう。

日本株については、以前から予想している安値時期の見通しをずるずると先送りしており誠に恐縮だが、日経平均株価は2024年前半に2万7000円あたりまで下落すると予想している。それでも、現水準から2割も下落しないという、極めて楽観的な見通しだ。

最近、筆者は読者や会員などから「株価下落を予想するのはわかった。では、どんなタイミングで下落が鮮明化するのか」というご質問をよくいただく。それに対しては、11月にアメリカで聞いた以下の言葉をもって、お答えしたい。

「アメリカ経済はどこかで雪崩を打って急激に悪化し、同国株は崖を落ちるように下落を始めるだろう。ただ、どこに崖があるかは、崖から落ちてみるまでわからない」

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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