2024年前半は世界的株安と円高がやってきそうだ アメリカの株価は景気後退を反映した調整へ

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ただ、より大きな流れをつかむには、実態面に着目することが肝要だ。2024年の世界市場の最大の材料としては「遅れてやってきたアメリカ経済の悪化」が挙げられる。

アメリカの消費が今後悪化すると読む3つの要因

「遅れてやってきた」と言ったが、いったい何から遅れたのか。それは、筆者が当初見込んでいた「2023年中にアメリカは景気後退に陥り、それが同国株のみならず、日本株も含めた世界株を2023年央にかけて下落させる」というシナリオだ。このコラムの読者ならよくご存じであろう。

アメリカの景気後退が見込みよりも大きく後ずれした背景としては、最大の需要項目である個人消費が想定外に堅調なことがある。さらにその要因としては、以下の3つが指摘できる。しかし、いずれの要因も、これからは消費悪化の方向へと働くだろう。

(1)コロナ貯蓄の取り崩し

2020年以降のコロナ禍を受けて、アメリカ政府は景気を支えるため、家計向けの補助金や失業保険給付金の上乗せなどを行って、家計に現金をつぎ込んだ。

しかしコロナ禍の間は、旅行、スポーツ・音楽ライブ・演劇などのイベント参加、外食や店舗での買い物などが難しくなり、手元に現金が積み上がった。この現金を「コロナ貯蓄」と呼んでいる。連銀の試算では、コロナ貯蓄の額は、2021年9月末に2.28兆ドルでピークに達したとされている。

コロナ禍が沈静化し、行動制約が緩むと、家計は可処分所得(収入から税金や社会保険料を引いた手取り)にコロナ貯蓄の取り崩しを乗せて、背伸びした消費を続けてきた。これが最近まで消費、ひいてはアメリカ経済全体を支えてきたわけだ。

しかし取り崩しを続けた結果、2023年11月にはコロナ貯蓄は全体としては底をついたと試算されており、「背伸び消費」は終焉したとみられる。

(2)「贅沢はやめられない」

こうして、これまでは身の丈に合わない過剰な消費が維持されてきた。しかし、毎月の受け取り賃金は増えてはいるものの、インフレ分を考慮するとパッとせず、手元の貯蓄も取り崩してしまった。金づかいが荒いため、すでにコロナ貯蓄が消え失せた家計も多いだろう。

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