渋谷「異例」タワマン開発、問われる区の説明責任 小学校の容積を民間へ配分する珍しいスキーム
都心で持ち上がっている小学校と民間のマンションを一体的に再開発するプロジェクトに、賛否の声がうずまいている。
JR渋谷駅から徒歩約10分。渋谷区役所の東隣に建つ、マンション「渋谷ホームズ」。1975年築、地上14階建ての同マンションに、建て替え計画が浮上している。東急不動産と清水建設が事業協力者となり、2031年にも地上34階建て、高さ150メートルのタワーマンションに生まれ変わる計画だ。
【2023年12月15日18時01分追記】初出時の一部表記を上記の通り修正しました。
「宇田川町に残された最後の開発用地と言われているんです」。渋谷ホームズの住民は、建て替え計画に期待を込めてそう話す。
マンションは価格の高騰が続いているが、需要は底堅いようだ。大京穴吹不動産・渋谷店の工藤純(あつし)店長は、「渋谷は外国のお客様も多い。彼らからすると、日本のマンションはまだ割安と映るようだ。このエリアの需要は当面強いだろう」と語る。
渋谷ホームズは、渋谷を代表する繁華街・渋谷センター街を上がってすぐの場所にある。周辺にマンションが少ないこともあり、複数の不動産業者は「建て替えが実現すれば、販売価格は坪1000万円は下らないだろう」と口をそろえる。
区役所を挟んで起きた「タワマン紛争」
他方、このマンション開発に不満を募らせる人たちがいる。
「こんな高いタワマンが建つとは聞いていなかった」。そう話すのは、渋谷区役所の北隣に建つタワマン、「パークコート渋谷 ザ タワー」(約500戸)の住民だ。同マンションは渋谷区が主導した再開発事業の一環で、2020年7月に建設された。底地は所有権ではなく定期借地権で、渋谷区が大家になっている。
そこからわずか50メートルほど離れた場所に浮上したタワマン計画。渋谷ホームズが建て替えられれば、パークコートより8メートルほど高くなる。パークコートの住民は「南東側の眺望が台無しになる。資産価値への影響は、高層階の部屋ほど大きい」と肩を落とす。
渋谷区は渋谷ホームズの敷地を市街地再開発事業区域とする予定。その動きに対しパークコート側は、住民約180名分の反対署名を集め、区に提出した。
同エリアは都市計画法上の商業地域で、日影規制などはない。いわば、周辺にどんな建物が建っても文句は言えないエリアだ。ただ、今回目を向けるべき問題は、タワマン開発自体ではない。それを可能にする再開発事業のスキームにある。
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