《日本激震!私の提言》送電網は新規業者に開放を 原発は政府が管理すべき--八田達夫・大阪大学名誉教授

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 もう一つの提案は、需要者側に節電を促すための、税と補助金によるインセンティブ制度を導入することだ。工場などの大口利用者は30分ごとに電力使用量を計測できる。たとえば、使用量を昨年の同時間帯より20%以上削減すれば、削減超過分に対して補助金を交付し、逆にそれ以下ならば削減不足分に対して税金を課すようにする。ピーク時の需要分散がかなり図れるだろう。

日本の電力会社の大口顧客は前日に計画需要量を給電指令所に報告することなく、当日自由に電力を消費できる。この需要に電力会社はいくらでも追従する、という建前の仕組みだ。このため、節電が図られず、実際には安定供給が脅かされている。

欧米では、電力自由化に伴い発電と送電は分離され、送電網は新規参入者に開放されている。日本では、電力会社の抵抗で実現していない。

私は、欧米では当たり前のリアルタイム市場(前日の計画との需給差を即時取引する)を創れば、危機の時にこそ、市場の価格形成機能により需要抑制と供給促進が図られる、と主張し続けてきた。だが電力各社は、危機の時にこそ、自らが発電・送電一貫体制でカバーする、と反論してきた。東日本大震災でその論理の破綻があらわになった。

--今後の電力政策として必要な手だては。

福島第一原発は一刻も早く東京電力から切り離し、政府の管理下に置くべきだ。その後東京電力はいったん国有化して、発電事業と送電事業を分離したうえで、原発以外の発電事業を民営化して新規参入業者との競争を促し、送電網は全業者が自由に使えるようにすることだ。原発は政府が責任を持つべきで、民間事業者の一部局が運営している現状を改めなくてはならない。

はった・たつお
1943年生まれ。66年国際基督教大学卒業、73年ジョンズ・ホプキンス大学経済学博士号(Ph.D.)取得、97年大阪大学社会経済研究所所長、99年東京大学空間情報科学研究センター教授、2004年国際基督教大学教授、07年政策大学院大学学長。

(週刊東洋経済2011年4月9日号掲載 記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

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