《日本激震!私の提言》送電網は新規業者に開放を 原発は政府が管理すべき--八田達夫・大阪大学名誉教授
原発はさらに、使用済み核燃料の最終処分という大問題を抱えている。欧米では政府が引き取って処分することとなっているが、日本では国が引き取り価格を提示する責任を回避しているため、電力会社が原子力発電の採算を計算できない。電力会社は高速増殖炉による再利用をするとしているが、これはフィクションだ。それまでプルサーマルによる再利用を行うというが、その燃料再処理にはさらに別の未知の技術が必要だ。国と電力会社は責任を押し付け合って問題を先送りしている。
計画停電の前にすべきこと 電力自由化の恩恵生かせ
--電力の安定供給も損なわれた。東京電力の計画停電が経済に深刻な影響をもたらす。
計画停電に踏み切ったのはとんでもないことだった。その前にすべきこと、できることがある。
電力会社は大口需要家と「需給調整契約」を結んでいる。これは、一般の利用者よりも安い料金で電力を提供する代わりに、供給能力が不足したら電力を切りますよ、という契約だ。これを行使せずに、信号機や電車や病院などのインフラ、一般家庭の電力を切ることは許されない。まず需給調整契約を行使すべきだ。
電力を止められた大口需要家にはほかに調達の手だてがある。2005年の電力自由化で新規参入した事業者(PPS、特定規模事業者)と新たに契約すれば電力供給を受けられる。しかし震災以後、電力会社は新たな送電の「託送供給」契約を認めていない。すぐにも送電線を自由に使えるよう、開放させるべきだ。
また、東京電力の管区内では震災後、日本卸電力取引所(前日市場)が停止している。PPSを含む供給業者と大口需要家が翌日の需給計画を出し合い、時間ごとに価格を決めていく市場だ。需要家は契約がなくても、この市場を通じて供給を受けられる。停止する理由はなく、今こそ活用すべき市場だ。ただし、現在のように、東電がほかの電力会社から特権的融通を受けている間は、東電をこの取引から除外すべきだ。