誰にでもある「3つの人格」認識すると変わる事 人間関係がうまくいかない人に共通する問題

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一方、日向子は、親に愛された記憶の塊です。自分が存在していることを周囲の人に歓迎され、傷ついた時にはいつでも慰めてもらえる居場所を持っていた経験から、自分には価値がある、というポジティブな信念を持っています。ですから、日向子には、陽気な子どもが持つあらゆるもの—自発性、冒険心、好奇心、忘我、活力、行動意欲、生きる喜び—が備わっています。

日向子と影子はどちらも、「内なる子ども」といわれている人格の一部であり、人の心理の中でも無意識を象徴するものです。しかし、「内なる子ども」の感情は、つねに無意識の中に留まっているわけではありません。私たちが「内なる子ども」に働きかければ、その感情を無意識から顕在意識にのぼらせることができるのです。

3つの人格の状態を自分自身で認識する

私は、心理療法士として長年仕事をしてきた中で、この日向子と影子の比喩を使ってほぼ全ての問題を解決する手法を開発しました。

“ほぼ”としたのは、自分の手中にない問題は除外されるからです。病気や愛する人の死、戦争、自然災害、暴力犯罪、性的暴行といった運命的な不幸などが、それにあたります。

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ただ、運命的な不幸を克服できるかどうかは、その人の人格次第、と言える場合もあります。運命的な不幸に傷ついた影子を守ろうとして懸命に生きてきた人は、日向子のポジティブな気質を発揮して楽しく暮らしてきた人よりも、人生は厳しいものに感じられるでしょう。

つまり、逆にいえば、運命的な不幸による問題を抱えている人でも、日向子に働きかけてポジティブな気質から不幸の感じ方を変化させ、苦しみを軽くすることができるかもしれません。そして、影子が呼び込む人間関係のトラブルも、大人の自分と日向子を利用して、解決できることもあるのです。

たとえば、「完璧でないと愛されない」という影子の信念から完璧主義に陥ったり、「逆らう人間は嫌われる」という影子の信念から人にNOを言えずに利用されてうつ病になったり、「自分は誰かを常にがっかりさせるダメな人間だ」という信念から、支配的なパートナーから離れられずに依存関係に陥る問題を、自分で解決できるのです。

これらの問題は皆さんの影子に刷り込まれたマイナスの思い込みが原因です。だからこそ、自分の心の中にある3つの人格がどのような状態で存在し、どのように思考や行動に影響が出るかを認識することがカギとなります。つまり、自分の心の奥底を理解することが、他者とうまくつき合っていける最短で最善のルートなのです。

シュテファニー・シュタール 心理学者、心理療法士

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Stefanie Stahl

約30年間の心理療法士、心理学者としての経験、および家庭裁判所鑑定人としての経験にもとづいて、「人とつながることに対する不安」「自己価値感」「内なる子ども」に関する数多くの書籍を執筆。わかりやすく読者の心に寄り添うように書かれた著書の多くがベストセラーになっている。膨大なカウンセリング経験と長年の研究から生み出された、心を改善する著者独自の手法は具体的かつ実践的であるため、専門家の間でも絶賛されている。ドイツのみならず他国でもセミナーを開催。専門家としてのテレビ、ラジオ出演、雑誌の寄稿も多数。

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