――司法修習生への修習資金の給費が65期(2012年度修習生)から廃止され、貸与制になりました。本来64期(2011年度修習生)から貸与制に切り替わる予定だったものを、先生の運動が功を奏し、1年先送りさせることができましたが、結局65期からは貸与制になってしまいました。
65期と次の66期の修習生とともに、給費制廃止は憲法違反であるとして、国を相手に損害賠償請求訴訟を起こしている。法科大学院時代の奨学金債務だけでも平均350万円、修習費が貸与制になったせいでさらに300万円増えて650万円、中には1000万円を超える負債を抱えた状態で新人弁護士としてスタートする人もいる。
申告所得70万円以下の貧困層の弁護士が上の世代で拡大したために、既存の事務所で新人を採用できなくなっており、そのために負債の返済を意識する新人が問題事務所に魂を売って就職せざるを得なくなっている。せっかく司法試験に合格しながら、司法修習を受けない人が急増しているのも、貸与制が影響していると思う。
予算枠の奪い合いで、修習生が割を食った
――法務省も最高裁も、貸与制への移行に反対しませんでした。後輩たちが借金を背負うことになるのに、なぜ反対しなかったのでしょうか。
表向きは3000人に司法試験合格者が増えると、修習資金の必要額が3倍に増えるから貸与制に、という話だったが、本音は違う。裁判官や検察上層部の中には、各省庁の事務次官クラスよりも高い給与をもらっている人たちがいる。
法務省全体の予算枠を財務省に握られる中で、法科大学院制度が誕生して法科大学院への補助金で予算枠が削られる分、自分たちの収入にメスが入ることを回避したかったからだろう。
――久保利弁護士らは修習そのものをなくし、法科大学院教育に一本化すれば、そもそも給費制の問題はなくなると主張しています。
戦前は弁護士が国家の監督下に置かれ、人権弾圧を抑制できなかった。その反省から、日本国憲法下で、民主的司法を担う人材育成の制度として、日本国憲法の施行日に、法曹3者の統一修習と合わせて導入されたのが給費制だ。
日本では戦後、弁護士が自治権を獲得できたからこそ、国の誤った政策にもモノが言えるし、その点は世界中から尊敬を集めている。統一修習の廃止などあってはならないし、むしろ修習期間も、かつての2年間に戻し教育を徹底すべきだ。
※ 久保利英明弁護士のインタビューは6月9日(火)配信予定です。
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